研究課題/領域番号 |
22221005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
下東 康幸 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00211293)
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研究分担者 |
野瀬 健 九州大学, 基幹教育院, 教授 (10301334)
下東 美樹 福岡大学, 理学部, 教育嘱託 (60078590)
松島 綾美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60404050)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 有害化学物質 / 内分泌かく乱物質 / ビスフェノールA / 核内受容体 / シグナル毒性 |
研究概要 |
内泌撹乱化学物質・ビスフェノールA(BPA)には「低用量作用」が懸念され、特に、胎児(仔)や乳幼児の脳神経系、及び生殖腺系での悪影響が強く心配されている。本研究では、これらの分子機構を解明することを目的とする。一方、BPAの代替としてビスフェノールAFなどを原料とする新プラスチックが続々と開発され、生産量が急増している。本研究ではこうした新世代ビスフェノールの核内受容体を介したシグナル毒性、内分泌撹乱作用の分子機構の解明にも取組む。本年度、新たに明らかとなった主な項目は、以下の通りである。 エストロゲン受容体ERに結合性の弱いBPAが、強いエストロゲン様活性を示す原因がERRとの協働作用であることを前年度までに明らかとしたが、これを実証、確認した。さらに、ERRのリガンド結合ドメインの共発現だけでも自発構成活性があれば十分であることが判明した。そして、生殖腺系ER-ERRでのこうした低用量作用に対して、脳神経系でも同様な協働作用が存在する可能性が強く示唆された。 ビスフェノールA暴露のマウス、及びショウジョウバエについて歩行活動解析を実施し、その影響を核内受容体遺伝子や時計遺伝子から解析した。多動性症状と低活動性症状の両方が出現すること、一塩基多型において塩基比率に異同が起きていることなどが新たに判明した。さらに重要なことに、遺伝子への影響はゲノムDNAでは全く起こっておらず、mRNAレベルでの事象であることが判明した。 ハロゲン含有化学物質は、ERに対して異なる受容体応答、例えば、「架橋部でのハロゲン含有ビスフェノールは、ERαにアゴニスト、ERβにアンタゴニストとして働く」。これに対して今年度、リガンド結合ドメインの変異解析から、その原因構造要因を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生殖腺系での低用量効果の分子機構について、核内受容体ER-ERR協働作用が機能することを発見し、さらに、脳神経系でも同様な協働作用が存在する可能性が強く示唆された。これにより、第一義的に重要な本研究課題の目的達成に向け、大きく前進した。また、新世代ビスフェノールであるAFのエストロゲン受容体α型とβ型での異なる受容体応答についても、主動するアミノ酸残基の存在が明らかとなり、分子機構解明に向けて大きく前進した。これらを含めて、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
生殖腺系に加えて、脳神経系でのビスフェノールA(BPA)の活性を増強する核内受容体の協働作用の分子機構解明の研究を推進する。ビスフェノール暴露マウスおよびショウジョウバエにおける遺伝子への影響について、その分子機構解明に向けてさらに解析を進める。特に、多動性症状ショウジョウバエの概日リズムペースメーカーホルモンPDFの前駆体遺伝子における塩基変異が、mRNAレベルで継代している事実について、その分子メカニズムの分析を試みる。こうして、本研究課題の目的の達成に向けて鋭意に取り組む。
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