研究課題/領域番号 |
22221006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森田 清三 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50091757)
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研究分担者 |
阿部 真之 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00362666)
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 / 原子操作 / 原子クラスタ組立 / 複合物性評価 / Si(111)7x7 / TiO_2 / 原子レベルナノ空間開閉 / 多元素ナノ構造体 |
研究概要 |
1.AFM/STMで原子間力とトンネル電流を、同時に、3次元マッピングする方法を開発した。また、トンネル電流のトンネル電圧依存性(CITS)から、局所電子状態密度(LDOS)を導く方法を開発した。 2.室温でSi(111)7x7のハーフユニットセル(HUC)ナノ空間内に閉じ込めたSi原子をナノ空間の開閉で出し入れして、一つのアンフォールテッドHUC(UHUC)内にSi原子1個を、隣接するフォールテッドHUC(FHUC)内に別のSi原子1個を入れた結果、導入した2個のSi原子が各HUCの1個のSiセンターアドアトムを引き抜いて、SiテトラマーをHUCの境界に作成できることを見いだした。つぎに、この人工SiテトラマーのAFM/STM同時測定を行い、原子間引力が強くなると、filled statesのSTM像がempty states-likeに変わることを見いだした。 3.Siテトラマーの構造を第一原理計算した結果、絶対零度ではrhombohedral構造で有ることを見いだし、室温では4つの等価な構造間を熱的に揺らいでいてSTMやAFMではその平均を見ていること、原子間引力が強くなると、最近接のSi原子が引っ張り上げられて熱揺らぎが押さえられてSi原子位置が固定することを明らかにした。 4.室温でSi(111)7x7のHUCナノ空間内に閉じ込めたPb,Ag,Au原子などをナノ空間の開閉で出し入れして、HUC内に原子数の確定したPbクラスタ、Agクラスタ、Auクラスタをそれぞれ作成することに成功した。 5.TiO_2(110)表面に、平均粒径サイズ2.5nm平均高さ2.5ÅのAuクラスタを作製し、接触電位差を測定した結果、室温のTiO_2(110)表面上でAuクラスタが負に帯電していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室温でSi(111)7x7のハーフユニットセル(HUC)ナノ空間内に閉じ込めた原子をナノ空間の開閉で出し入れして、HUC内に原子数の確定したPb原子1~6個のクラスタ、Ag原子1~12個のクラスタ、Au原子1~12個のクラスタを作成した。また、原子間力とトンネル電流を、同時に、3次元マッピングする方法や局所電子状態密度(LDOS)を導出する方法を開発し、原子数の確定したナノクラスタを評価する準備が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
室温では、室温の熱エネルギー揺らぎがあり、それを制御して利用することにより、原子操作が容易に行えるが、他方、原子操作途中の中間状態が不安定(短寿命)になり、AFMで中間状態が画像化できず見えなくなることが判明した。その結果、室温では原子操作の移動過程(機構)の解明が困難であることが判明した。また、室温の熱揺らぎで、作成したナノクラスタを構成する原子が揺らぐ(不安定になる)ため、個々の原子を分離した原子分解能の画像化が室温では難しいことが判明した。以上の対策として、原子操作によるナノクラスタの構築は室温で、他方、原子操作の移動過程の解明や作成したナノクラスタの原子分解能観察などは低温で行う必要が有る事が判明したので、低温AFMの立ち上げも行うことにした。
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