研究課題/領域番号 |
22221007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村山 明宏 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (00333906)
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研究分担者 |
末岡 和久 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (60250479)
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キーワード | ナノ構造作製 / 量子ドット / ナノ光デバイス / スピンデバイス / ナノ表面・界面 |
研究概要 |
固体電子回路における電子スピン情報を光伝送するための新しい光デバイスであるスピンレーザーの実現を目指して、レーザー光発振中に電子スピン状態を維持することが可能な半導体量子ドットを活性領域とする「量子ドットスピンレーザー」を研究する。 平成23年度は、昨年度に引き続き、主要な研究課題である半導体量子ドット層と金属強磁性体の原子層制御エピタキシャル成長に関する研究を複合型超高真空エピタキシーシステムにより行い、半導体量子ドットの良好な結晶構造や発光を始めとする光学特性、スピン緩和特性などを明らかにした。 また、電子ビームリソグラフィーにより半導体量子ドット層表面における金属強磁性体ナノ構造スピン電極の作製を行い、発光ダイオード構造の作製と顕微分光による光学特性評価を行った。さらに、STM/NC-AFMシステムにより、半導体表面および金属強磁性体薄膜表面のナノスケールでの形態観察とその強磁性スピン状態の計測を行うとともに、半導体量子構造における電子波動関数の空間分布に関する知見を得ることが出来た。 さらに、半導体量子ドットに対する高効率電子スピン注入プロセスを確立するため、II-VI族希薄磁性半導体とIII-V族のGaAs量子井戸やInAs自己組織化量子ドットからなるスピン注入型トンネル接合を作製し、希薄磁性半導体に生成したスピン偏極電子のスピン注入ダイナミクスを磁場中スピン分解ピコ秒発光分光により研究した。その結果、GaAs量子井戸への100-200psの超高速電子スピン注入と50%以上のスピン保存率を示す高効率電子スピン注入に成功した。また、磁場中スピン分解超高速ポンププローブ分光により、コアシェル型半導体量子ドットにおけるフェムト秒領域のスピン緩和と磁場効果を計測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度に導入した複合型超高真空エピタキシーシステムの成膜条件最適化を終了し、主要な研究課題である半導体量子ドット層と金属強磁性体の原子層制御エピタキシャル成長に関する研究を開始するとともに半導体量子ドットの良好な結晶構造や光学特性、スピン緩和特性などを確認できたため、おおむね順調に進展していると判断できる。また、本研究の推進に重要な各種のスピン計測手法の開発と測定も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、半導体量子ドット層と金属強磁性体の原子層制御エピタキシャル成長界面の詳細な研究を推進し、強磁性体からの電子スピン注入に関する知見を得ていく。また、現在行っている金属強磁性体ナノ構造スピン電極を用いた発光ダイオード構造の作製プロセスを確立する。また、強磁性電極から半導体量子ドットへのスピン偏極電子の注入輸送過程におけるスピンの緩和現象を明らかにするため、新たにスピン分解励起発光分光を実施する。
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