研究課題
基盤研究(S)
本課題では、ヒト染色体を研究対象とし、(1)リピート配列も含め、全染色体レベルで染色体構築、動態、核内構造を掌握可能な染色体情報解析システムの構築、(2)(1)のシステムを用いた、ヒト染色体の構造基盤、諸機能の連携機構の予測、3)さらに、2)の予測を実験的に検証し、ヒト染色体の基本動態についてモデル化を行う。本申請により機能連携統合体として全く新たなヒト染色体像を得るだけでなく、染色体情報解析システムの構築によりヒトの種々の疾病の分子病態に新たな側面から迫るための基盤を得る。今年度の具体的成果としては、以下のとおりである。(1)次世代シークエンスデータに基づき全染色体レベルでヒト染色体構造と動態をあらゆる解像度で可視化するパイプラインの構築次世代シークエンサの一種であるSOLiDを用いたChIP-seq実験に関し、得られたデータの情報解析パイプラインのプロトタイプ(Human,Mouseなど)を開発した。また、遺伝情報をはじめとした様々なゲノム特徴量とともに解析結果データを可視化し、染色体の俯瞰から、塩基単位での情報までを取得することを可能にしたWWWを用いたデータベースに関してもプロトタイプ版を開発した。(2)ChIP-seq法によるヒト染色体の基本構造及びその細胞周期に於ける変遷の解明ヒト染色体の基本的構造(ヘテロクロマチン、ユークロマチン、複製開始点、終結点、姉妹染色分体間接着部位、セントロメア、染色体凝集部位、テロメア)とその変遷の全体像を明らかにするために、ヘテロクロマチンタンパク、ユークロマチンタンパクについて一通りの解析を行った。特にコヒーシンのサブユニットのうちアセチル化修飾を受けるSmc3についてアセチル化修飾を特異的に認識する抗体を作成し、その局在、動態を求めた所、このタンパクがピストン脱アセチル化酵素による脱アセチル化制御を受けており、転写調節に関わることを明らかにした。(3)ヒト染色体の3次元構築解明のための技術開発核内のDNAの三次元構造の解明のために3C解析法を導入した。現在、コントロールとして用いた細胞、領域では良好な結果が得られており、今後、全ゲノムレベルでの解析を行う予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)
Curr Biol.
巻: 20 ページ: 1787-98
Mol Cell.
巻: 39 ページ: 689-699
Nucleic Acids Res.
巻: 38 ページ: 5657-71
Cell.
巻: 143 ページ: 737-49