研究課題/領域番号 |
22221009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白髭 克彦 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90273854)
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研究分担者 |
広田 亨 (財)癌研究会・癌研究所, 実験病理部, 部長 (50421368)
伊藤 武彦 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (90501106)
須谷 尚史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30401524)
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キーワード | ChIP-seq解析 / 染色体動態 / 染色体情報 / 染色体構築 |
研究概要 |
本課題では、ヒト染色体を研究対象とし、(1)リピート配列も含め、全染色体レベルで染色体構築、動態、核内構造を掌握可能な染色体情報解析システムの構築、(2)(1)のシステムを用いた、ヒト染色体の構造基盤、諸機能の連携機構の予測、3)さらに、2)の予測を実験的に検証し、ヒト染色体の基本動態についてモデル化を行う。本申請により機能連携統合体として全く新たなヒト染色体像を得るだけでなく、染色体情報解析システムの構築によりヒトの種々の疾病の分子病態に新たな側面から迫るための基盤を得る。今年度の具体的成果としては、以下のとおりである。 (1)次世代シークエンスデータに基づき全染色体レベルでヒト染色体構造と動態をあらゆる解像度で可視化するパイプラインの構築 昨年度までに開発してあった次世代シークエンサのChIP-seqデータの情報解析パイプラインのプロトタイプ(Human,Mouseなど)について、さらに改良を行い、可視化処理に於けるデータ表示の実行速度を短縮化しただけでなく、pdfファイルとして、これを配布出来るようにした。また、WWWを用いたデータベースに関してもプロファイル間の比較が可能な様に新たな機能を加えた。 (2)ChIP-seq法によるヒト染色体の基本構造及びその細胞周期に於ける変遷の解明 昨年より特に染色体基本構造の全体像を明らかにするために、ヘテロクロマチンタンパク(HPI)およびキネトコアタンパク(CENP)に焦点を当て解析を進めている。リピートへのこれらのタンパクの結合を情報学的に評価するアルゴリズムを作成中である。また、コヒーシンのサブユニットのうちアセチル化修飾を受けるSmc3についてアセチル化修飾の動態を解析し、このタンパクの脱アセチル化酵素がヒト遺伝病(CdLS)の原因遺伝子であることを突き止めた。 (3)ヒト染色体の3次元構築解明のための技術開発 プロトコルは完成し、東大先端研の和田グループと共同でコヒーシンによって形成される染色体3次元構造のChIA-PETによる解析に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに成果を上げつつ順調に進んでいるが、特に世界にさきがけて、タンパク脱アセチル化酵素によりヒトの遺伝病が発症することをその発症の分子的作用機序も含めあきらかにしたこと、また、コヒーシンタンパクのアセチル化が転写制御に寄与していることを、アセチル化の生理的意義も含めて示したと言う予想外の成果が得られた。そのため上の評価とした。これらの発見はコヒーシンのアセチル化修飾が新たなエピゲノムマーカーになりうることを示しており、今後解析を継続して行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り進めて行くが、その中でも欠かせないのはヒトゲノムの6割を構成しているリピート配列へのタンパクの結合を定量的に評価出来る情報システムを構築することである。このシステムを構築し、さらに、種々のリピート配列がどのように染色体の高次構造構築に寄与しているのかを明らかにすることで、ヒト染色体構築の全体像の理解へとつなげて行く。
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