研究課題/領域番号 |
22223004
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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研究分担者 |
淺羽 茂 学習院大学, 経済学部, 教授 (60222593)
細野 薫 学習院大学, 経済学部, 講師 (80282945)
尾崎 雅彦 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (50470068)
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キーワード | 統計調査 / 国民経済計算 / 産業組織論 / 日本経済論 / 企業金融 |
研究概要 |
マクロ・産業別の無形資産投資については、平成22年度に引き続き推計を行った。この結果第1次の推計結果については、平成24年3月にパリで開かれたOECDのNew Source of Growth Projectの研究会で報告を行うことができた。OECDのNew Source of Growth Projectでは、経済成長における無形資産の役割を重視するとともに、無形資産投資の各国比較を行うことになっている。 一方ミクロレベルでの無形資産研究の基礎となるインタビュー調査については、平成22年度中に調査の設計を終え、23年度に入ってすぐに実施する予定であった。しかしながら、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、平成23年度が始まった時点では企業活動は大混乱に陥っていた。この時点でインタビュー調査を実施することは難しいと考え、同年12月まで開始を延長した。しかし年度末の3月までに回答が得られた企業数は、わずか277企業であり、前回の半分以下であった。そこで当初製造業の上場企業だけを対象としていた方針をあらため、非製造業にまで調査対象範囲を広げ、繰り越した予算を利用して、平成24年7月から9月まで再度調査を実施した。この調査で回答があった企業の数は、125企業であり合計で402企業の調査結果が得られた。 企業レベルにおける無形資産投資の分析は、従来の企業投資や企業レベルでの生産性の変動及び参入・退出行動と深く結びついている。これらの分野は「企業動学」と呼ばれているが、本研究では、この企業動学の中に無形資産をどう位置付けるかを考察すべく、平成24年2月に「無形資産、生産性と日本経済」と題するコンファレンスを開いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロ・産業レベルでの無形資産投資の推計は、経済産業研究所で公開されている日本産業別生産性データベース(Japan Industrial Productivity Database)の産業分類にしたがった108の産業分類での推計が終了し、当初計画通りの達成度となっている。 企業レベルでの無形資産を計測するためのインタビュー調査は、平成23年度中に、大半の調査を終え、経営スコアを算出するはずであったが、平成23年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、インタビュー調査の開始を延期したため、平成23年度中の経営スコアの算出には至らなかった。このため研究費を平成24年度に繰り越して、その資金で再度インタビュー調査を行い、平成24年10月には、402企業のデータを得た。このインタビュー調査については、計画当初より、平成24年度を、平成23年度のインタビュー調査に関する補足調査の年度にあてていたため、回答率については当初の想定を下回ったが、研究の進捗状況としては、当初計画通りであると判断している。 平成24年度の研究実績でも報告するが、このインタビュー調査の結果を用いた分析も進んでおり、インタビュー調査結果と企業価値の関係を調べる分析は、平成24年度内に開かれた無形資産に関する国際コンファレンスでも報告が行われ、平成25年度には、経済産業研究所のディスカッション・ペーパーとして公表される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マクロ・産業別の無形資産投資の推計は、ほぼ完成した。今後はこのデータの公表を行うと同時に、国際的な会議で研究成果を報告していき、INTAN-Invest project、Confernce Boardなど欧米諸国の無形資産プロジェクトや研究機関との連携を強めていく。 ミクロレベルでは、2回にわたるインタビュー調査の結果をなるべく早くとりまとめ、企業パフォーマンスとの関係を調べる分析へとつなげていく。またこのインタビュー調査と補完的な役割を果たせるよう、上場企業の財務データを用いて、無形資産投資の推計を行い、この推計された無形資産と企業価値との関連を調べていく。 日本における無形資産投資の計測とその経済効果についての分析を行った後は、ソフトウエア、研究開発投資、ブランド、人的資本など個別の無形資産項目と生産性などの経済パフォーマンスとの関係を調べていく。また海外の無形資産関連のデータや、企業財務データを収集することにより、これまで日本の産業や、企業を対象にした分析を、海外の産業や企業に適用し、無形資産の経済効果に関する国際比較を行っていく。
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