研究課題/領域番号 |
22223004
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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研究分担者 |
尾崎 雅彦 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (50470068)
淺羽 茂 学習院大学, 経済学部, 教授 (60222593)
細野 薫 学習院大学, 経済学部, 講師 (80282945)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 統計調査 / 国民経済計算 / 産業組織論 / 日本経済論 / 企業金融 |
研究概要 |
産業別の無形資産投資の推計については、内外の学会等(2012年度日本経済学会春季大会、International Association of Research on Income and Wealth 第32回大会)において報告を行った。またこれを平成24年7月に経済産業研究所のウェブサイト(http://www.rieti.go.jp/jp/database/JIP2012/index.html#04-6)で公表した結果、この計測結果とそれを使った論文が、OECDのNew Source of Growth Projectの報告書や無形資産研究の先駆者であるCorrado氏達の報告の中で取り上げられるようになっている。 ミクロ面では、平成23年度、24年度の調査を含めて402の企業について調査結果が得られた。韓国の三星経済研究所も同様の調査を行っており、両国の調査の概要についてのミーティングを、平成25年1月30日に行った。また日本の調査結果だけを利用した分析も浅羽学習院大学教授(現早稲田大学教授)を中心に進められており、その一部は、平成24年12月に開催されたIntangibles, Innovation Policy and Economic Growthと題する国際コンファレンスで報告された。 企業レベルにおける無形資産投資の分析は、従来の企業投資や企業レベルでの生産性の変動及び参入・退出行動と深く結びついている。この分野について細野学習院大学講師(現教授)がその成果を平成25年1月に「フィナンシャル・レビュー」通巻第112号の特集「企業ダイナミクスとマクロ経済」として刊行し、細野氏だけでなく、宮川もその特集に、無形資産を含む成長会計や、製品転換の論文を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロ・産業別の無形資産の計測及びそのデータを利用した分析については、当初の研究スケジュール通り進んでおり、その研究成果について内外からの認知が進んでいる。こうした成果の公表や、最初の2年間に生産性関連のコンファレンスを共催したという実績を積んだことで、3年目の平成24年12月にIntangibles, Innovation Policy and Economic Growthと題する国際コンファレンスを研究計画通りに開催することができたと考えている。また産業レベルの無形資産投資の推計結果とその経済的効果の実証分析については、2013年3月にThe Japanese Economic Reviewに論文が掲載され、マクロ・産業レベルでは、3年間で計画時に想定した通りの結果を出すことができたと評価している。 一方ミクロレベルでの、無形資産の計測とその分析は、平成23年度におけるインタビュー調査の回答率が低かったため、データの最終的な収集が平成24年10月となった。しかし、当初より平成24年度は、インタビュー調査の補足調査の期間にあてていたため、そのデータを利用した分析に遅れが出たわけではない。実際、平成24年12月の国際コンファレンスにおいて、一部の研究成果を報告している。また産業別無形資産の推計結果を利用して、上場企業の無形資産の計測も並行して行っている。こうしたミクロレベルでの無形資産の諸分析は平成25年度初めには経済産業研究所のディスカッション・ペーパーとして公表される予定であり、この分野での分析も順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
【平成25年度】 マクロ・産業レベルの無形資産推計に関しては、無形資産研究の第1人者であるCorrado氏やHaskel教授らが主催しているINTAN-invest projectやConference Boardのプロジェクトにおける新しい無形資産投資の推計結果との連携や調整を進める。企業レベルの無形資産分析については、平成25年度の前半に分析結果を経済産業研究所のディスカッション・ペーパーの形で公表する予定である。その後は、Asia Pacific Economic Associationのコンファレンス(平成25年7月 於大阪)などで研究結果を報告していく予定である。また、平成24年12月に開催した国際コンファレンスの報告論文については、現在パリ第11大学のBounfour教授と相談し、英文のコンファレンス集として公刊することを目指しており、ヨーロッパと日本で出版先を交渉中である。 インタビュー調査を利用した分析については、平成25年度中に三星経済研究所と日韓比較分析の可能性や公表方法について検討を行う。これとは別に平成25年8月にソウルで開催される第2回Asia KLEMS Conference(アジアの生産性データベースに関するコンファレンス)では、無形資産に関する報告を含める予定でいる。 こうした作業と並行して、平成25年度には、これまでに作成及び購入したデータを使って、より国際比較に重点をおいた無形資産分析と無形資産の各項目と企業パフォーマンスとの関係を調べた分析を進める。 【平成26年度】 4年間の研究成果を踏まえて無形資産に関する分析を含む日本の企業行動に関する和文の書籍の公刊を目指すとともに、これまで無形資産研究を通して培った国際的な研究ネットワークを使って、無形資産と企業行動に関する総括的なコンファレンスを開く予定である。
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