研究課題
本研究の目的は、前研究で完成した世界初の宇宙遠赤外線干渉計FITE(Far-Infrared Interferometric Telescope Experiment)の基線長を20mまで延伸して、空間分解能1秒角を達成する。大規模星形成領域をこの分解能で遠赤外線観測を行い、ダスト分布の空間情報を得ることであった。2014年度にオーストラリアから大気球フライトを実施する計画であり、そのために、(1)新フレームの強度試験 (JAXA宇宙科学研究所にて実施)、(2)オーストラリアにおける送受信システムへの対応、(3)遠赤外線センサー多素子化を行い、12月までには準備を完了し、2月にはオーストラリアに機材を発送する計画であった。(1)については新たにCFRPでフレームを製作し、実験に耐える強度を備えていることを荷重試験で実証した。(3)についても素子数を5倍にした遠赤外線センサーを組立た。しかしながら、このオーストラリア実験が延期されたため、経費の一部を2014年度に繰り越した。2014年度においては(2)に関連して新たな送信容量に適合するようにスターセンサーカメラの画像圧縮技術を開発した。さらにはオーストラリア現地での光学的調整作業を能率的に行うために、新たに二種類の調整機構を開発した。いずれもオリジナルなアイデアに基づくものである。これらの研究成果については、国内・国外の研究会や雑誌論文にて公表した。
4: 遅れている
本研究の当初計画と比較すると、初年度のブラジルでのフライトが重要装置の度重なる故障で断念せざるをえなかったこと、その後、オーストラリアにフライト基地を変更したために必要になった装置の改修作業が多岐にわたっていることから、未だにフライトが実施できていない。この重要装置の故障にの原因を探るために、JAXAの専門家と徹底的な調査を行ったが、原因の特定には至っていない。したがって、可能性のある原因をすべて取り除くことと、万が一の故障が発生した時のために予備機を準備しておくことで対処する。これの対策に1年を要した。一方、この期間を利用して、遠赤外センサーの多素子化、装置フレームの軽量化、可搬性の高度化、フライト現地での光学調整作業の省力化など、大気球搭載遠赤外線干渉計装置の高度化を達成してきており、フライトを実施した場合の成果の期待値は、当初よりも有意に大きくなったと考えられる。
本装置のフライトは、JAXAの大気球観測事業の実験項目の一つであり、JAXAがオーストラリアでの実験実施に合わせて、本実験を実施する必要がある。JAXAは2015年度に最初の実験を行う計画であり、ようやく、我々の装置のフライトの準備と環境が整ってきた。本装置は世界で類のない、大気圏外の干渉望遠鏡である。将来の宇宙空間における干渉計望遠鏡衛星への第一歩として、何としても実現を図りたい。チリ高地に設置されたALMA望遠鏡によってサブミリ波電波での高解像撮像が大きい成功を収めているが、星間物質の放射のレイリー・ジーンズ側の測定であるために、物質の温度を決めることが困難である。より短波長の遠赤外線で高解像の観測を推進していくことで、この分野の研究が一層発展すると考えられる。最終年度であった2014年度の研究費の過半を2015年度に繰り越し、準備を万全にしてオーストラリアでのフライト実験に臨む計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology
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