研究課題/領域番号 |
22224004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
須田 利美 東北大学, 電子光理学研究センター, 教授 (30202138)
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研究分担者 |
足立 竜也 東北大学, 電子光理学研究センター, 助教 (70456911)
若杉 昌徳 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター・実験装置開発室, 室長 (70250107)
玉江 忠明 東北大学, 電子光理学研究センター, 教育研究支援者 (10124174)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 電子弾性散乱 / 短寿命不安定核 / 電荷密度分布 / SCRIT法 |
研究概要 |
世界初の電子弾性散乱実験による短寿命不安定核研究に向けて平成24年度は以下の研究開発を実施した。1)散乱電子測定系の建設並びにテスト、2)ウラン光核分裂反応を利用した短寿命不安定核生成・分離装置(ISOL)の建設と不安定核生成、3)SCRIT装置への不安定核イオンビーム輸送ラインの建設、4)安定核を使ったSCRIT装置全体の総合テスト、である。 1)散乱電子測定系は、大型電磁石と大型ドリフトチェンバー、そしてデータ読み出し系で構成される。平成23年度完成予定だった電磁石は東日本大震災のため同年科研費を繰越し平成24年度内に完成、ドリフトチェンバーは平成24年度完成、そして仕様を大幅変更したデータ読み出し系は平成24年度科研費を繰越し平成25年度1月に完成した。電磁石については80万点に及ぶ詳細な磁場測定を行い、データ解析の結果研究に必要な3次元磁場分布を決定した。 2)日本初のウラン光核分裂反応を利用した短寿命不安定核生成・分離装置を完成し、電子ビーム照射により研究対象である寿命40秒の2重魔法核、132Sn、を生成、分離、輸送そして同定に成功した。 3)短寿命不安定核生成・分離装置で生成した不安定核をイオンビームの形で電子散乱実験を実施するSCRIT装置まで高効率で輸送するイオンビーム輸送ラインを建設し輸送性能試験を行った。 4)上記生成・分離装置より安定Xeガスを導入、イオン化の後質量分析したXeイオンビームをイオンビーム輸送系を通じて輸送し、SCRIT装置で捕獲、そして電子散乱実験を実施した。これは建設が終了した世界初の不安定核専用の電子散乱実験施設の総合運転テストである。安定核は弾性散乱断面積が既知であり散乱電子測定より到達ルミノシティーを決定することができる。実験の結果、要求ルミノシティーである 1e27 /cm2/s に近い 4e26/cm2/s を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度内の不安定核との電子散乱実験実現を目指して、平成24年度中の散乱電子測定系の完成、そして測定系性能の詳細な性能評価のために極細ワイヤー標的や安定核(Xe核)を使った散乱実験を実施する予定であった。 散乱電子測定系の電磁石は東日本大震災で建設が一年遅れたが、電磁石完成後の磁場測定やそのデータ解析を実施し必要な3次元磁場分布を確定した。従って電磁石関係の研究についてはすでに遅れを取り戻した。電子軌跡測定のための大型ドリフトチェンバーの建設と検出器のテスト自体は当初の予定通り平成24年度内に実施したが、検出器テストの結果信号処理用多チャンネル時間測定回路に厳重なノイズ対策を施す必要が判明し、慎重な検討の結果全く新しい仕様の多チャンネル時間測定回路を作り直すことになった。その結果、極細ワイヤー標的や安定核(Xe核)を利用した電子散乱実験を通じた散乱電子測定系の性能評価が実施できておらず、当初の研究計画にくらべやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度中には多チャンネル時間測定回路が完成するので散乱電子測定系の性能評価を進める。磁場測定で決定した80万点の磁場分布データを使った電磁石系のシミュレータ並びに磁場分布とドリフトチェンバーで測定する軌跡データから散乱電子の軌道を決定する軌道解析プログラムを構築する。平行して、極細ワイヤー標的や安定核(Xe核)からの弾性散乱事象を利用し運動量分解能や有効立体角などを実測し、シミュレータ結果との比較を通じて、散乱電子測定系の性能を高精度で把握する。これは、電荷分布密度の情報を含んでいる弾性散乱断面積の散乱角度依存性の正確な決定には必須な作業である。 これが終了すれば、平成26年度中には短寿命不安定核、132Sn、の電子散乱実験を開始することができる。平成26年度中には、ルミノシティー向上のための短寿命不安定核生成・分離装置とSCRIT装置の高度化を図りなが電子弾性散乱実験を実施し、132Sn 核の電荷形状分布の決定を目指す。
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