研究課題/領域番号 |
22224008
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
米田 明 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (10262841)
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研究分担者 |
伊藤 英司 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 名誉教授 (00033259)
富岡 尚敬 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30335418)
芳野 極 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30423338)
山崎 大輔 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (90346693)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | ポストペロブスカイト / マントル核境界 / 川井型装置 / ペロブスカイト / D"層 |
研究概要 |
本年度において半導体ダイヤモンドヒーターの開発が進んだ。一つは、ボロンを含んだ機械加工可能なグラファイト焼成体の開発である。パウダー充填で行われた先駆的研究での困難を解消した。本焼成体ヒーターではダイヤモンド安定領域で予備加熱を行いダイヤモンド化した後に本加熱を行う。2012年6月頃よりSD-KMAによるシリケイト溶融実験に使用するようになった。 一方、SC-DHそのものの開発も行われている。右の二つの図がその成果である。SC-DHの将来性が実証できた。この過程において、電子回路デバイスとしての半導体ダイヤモンドの可能性を認識することになり、産総研の気相成長ダイヤモンド研究グループとの共同研究を検討している。 珪酸塩ペロブスカイト及びポストペロブスカイトのアナログ物質であるPbnm-CaIrO3とCmcm-CaIrO3の結晶弾性定数をX線非弾性散乱法により決定した。同一組成で両相の結晶弾性を決定した最初の事例となる先駆的業績である。本実験結果をもとに地震波で検出されているD”層内の地震波速度異方性の起源を推定した。 大迫により熱物性測定セルの小型化が成功し、圧力領域を8GPaから12GPaに拡大できた。本成果をもとに、大迫とWangが協力して各種パイロキシンの熱伝導率を系統的に測定した。本成果をもとに大陸下部の温度モデルを構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に掲げたSD-KMAでの発生圧力向上が十分達成できていない。それ以外の項目では、半導体ダイヤモンドヒーターの開発や新規研究課題(X線非弾性散乱、GHz音速法等)の開拓など、オンリーワンの成果を複数達成したと自己評価している。さらなる発生圧力向上を目指す今後の戦略として、(1) より高強度の新型焼結ダイヤモンドの利用と、(2)有限要素法シミュレーションの活用を考えている。 CMB直上のD”層は地球全体のダイナミックスを支配する領域という認識が確立しつつあるが、SD-KMAでD”層をターゲットにした実験研究を若手研究者が思う存分行えるようにする基盤を確立することが、固体地球科学コミュニティに対する我々の責務と感じており、自分たちにできる最大限の努力をそこに傾注する所存である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画は二つの視点から構築されている。第一は申請当時の研究計画の完遂である。順調に進んでいるものは現状の体制を続ければよいが、遅延が生じているところには手当てが必要である。特に最重要課題である川井型装置(KMA)の発生圧力の目標が達成できていないので、今後二年間、新型SDによる発生圧力の向上に専心する。圧力発生技術開発において、有限要素法シミュレーションを有効活用する予定であったが、塑性変形解析に超長時間かかる事態に直面し、現在まで有効活用できていない。計算機能力または塑性変形解析アルゴリズムが格段に改善するまでは、可能性のある条件内での計算を一通り済ませ、その結果をデータベース化し後利用する形式が、現段階での実際的対応と考えている。 第二の視点は本研究計画中に生まれてきた新しい研究テーマを育てていくことである。半導体ダイヤモンドヒーターの開発は当初計画からあったが、それが開発された現段階では、次の展開は下部マントル条件でのシリケイト溶融実験への応用である。その他にも、X線非弾性散乱による結晶弾性測定、DACによるGHz音速法の開発、DACによるペロブスカイト-ポストペロブスカイト相転移機構のその場観察等がある。 以上に述べたようにKMAに専心する研究計画の中からDACを活用する研究テーマが生まれてきており、本研究計画終了後は、KMAとDACを統合した、より総括的な研究計画を策定することになると予感している。
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