研究概要 |
二酸化炭素は酸性気体なので,人為起源二酸化炭素の放出は,地球温暖化の他に海洋酸性化をもたらし,新たな地球環境問題として注目されている.最終的に,地球表層(大気圏,水圏,生態圏,岩石圏)システム全体の中で,海洋酸性化の位置づけ,pHを支配する地球システムと将来の生物圏への影響を明らかにする. ミドリイシなどのサンゴを対象として精密飼育実験を行い,PCO_2(300,400,600,800,1000ppm;それぞれpH8.17,8.07,7.92,7,83,7.75)5段階の酸性化海水中への対する応答を調べたところ,共生藻をもたない幼サンゴにおいては酸性化による石灰化の抑制効果が顕著に表われた。 ICP-MSレーザーアブレーションシステムについて,立ち上げを行い,標準試料で十分の再現性のあることを確認した. P/E境界を対象として,酸性度と底棲有孔虫の群集組成変化との関係を解析した.炭酸塩の安定性では,圧量が高くなると溶解しやすくなるので,深海底の底棲有孔虫が絶滅に至った.今世紀末から同等の大量絶滅が深海底で起こる可能性が高いという私達の「大量絶滅海洋酸性化説」をSite 1220以外の測点で検証し,国際誌に投稿中である. 地下水,河川水調査を行い,陸域での風化がどのくらいpHを中和する機能があるのかを調べることを目的に,水の滞留時間の長い湖からアルカリ性の霞ヶ浦と酸性の猪苗代湖の調査を行った.その結果,栄養塩を消費して有機物を作るプロセスは,湖水など溶存物質濃度の低い水環境では,顕著なアルカリ性化を示すことがわかった.また,世界の大河でもそのような特徴がみられるか,どうかを検証するため,バングラデシュ国を訪れ,ガンジス川,ブラマプトラ側,メグナ川で調査を行い,水試料を採取し,現在分析中である.今後,世界の大河における炭素循環を明らかにする予定である.
|