研究課題/領域番号 |
22225003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺前 紀夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70114569)
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研究分担者 |
西澤 精一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40281969)
山口 央 茨城大学, 理学部, 准教授 (10359531)
徐 志愛 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50562336)
佐藤 雄介 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90583039)
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キーワード | 化学センサー / バイオセンサー / 蛍光性リガンド / 拡散 / ナノ細孔 / 過冷却 / miRNA |
研究概要 |
近年疾患との関連で注目を集めている小分子RNAは、その短鎖性ゆえに既存のDNA分析法を直接適用し難い問題点を抱えている。この状況を克服するため、本研究ではナノ細孔を小分子RNA検出場とする分析法を開発する。そのため、脱塩基含有核酸プローブと蛍光性リガンドを併用するRNA塩基認識ならびにナノ細孔内における過冷却状態の利用に基づく小分子RNAの超高感度検出法を開発し、これをもとにしたアレイチップによる小分子RNA解析に向けた基礎技術の開拓を目指す。 本年度、小分子RNA、特にマイクロRNA検出用蛍光性リガンドの改良を目的として、脱塩基部位結合リガンドであるナフチリジン誘導体と核酸結合性蛍光色素であるシアニン誘導体とを連結したコンジュゲートを開発した。開発した一連のコンジュゲート群のRNA 検出能を評価したところ、DNA プローブを用いた場合、脱塩基部位結合に基づく塩基識別能ならびにシアニン部位に基づく明瞭な発蛍光応答を発現することを見出し、実用的検出に向けた蛍光応答の改良に成功した。加えて、本分子設計では各部位の合理的機能集積が可能で、網羅的RNA検出に適用しうる有用な方法論であると言える。 一方、ローダミン色素をプローブとした時間分解蛍光法によってアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を修飾した直径3-60 nmのナノ細孔内部における過冷却現象を検討したところ、およそ-50℃まで細孔壁近傍に過冷却水が安定に存在しうることを見出し、ナノ細孔内部で過冷却水を利用したmiRNA検出系が構築可能であることが分かった。さらに、ナノ細孔内部でのDNA二重鎖形成について検討したところ、通常のバルク溶液系では熱力学的に起こりえない極短DNA二重鎖形成反応が過冷却条件下で起こることを見いだした。これらの結果は、過冷却状態を利用した高感度小分子RNA検出の可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的における「蛍光性リガンドの開発」ならびに「ナノ細孔内特異的環境の解明」ともに小分子RNA検出用アレイチップ開発に向けた重要な基礎的知見が得られている。まず蛍光性リガンド群のスクリーニングを行い、得られた候補化合物骨格をもとに蛍光色素とのコンジュゲート群を開発し、結合親和性、蛍光応答の改良に成功しいる。一方、ナノ細孔内環境の解析では、ローダミンを蛍光プローブとして用いることで、シリカナノ細孔内の過冷却水の存在が示唆された。加えてナノ細孔内過冷却状態において核酸分子の基礎物性の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果を踏まえて、脱塩基部位DNAプローブを修飾したシリカナノ細孔内における蛍光性リガンドを用いた小分子RNA検出へと展開する。具体的には、ナノ細孔内でのDNAプローブ/標的小分子RNAとのハイブリダイゼーション、引き続いて形成する二重鎖に対する蛍光性リガンドの結合に伴う蛍光応答の観測を目指す。ナノ細孔内におけるハイブリダイゼーションは核酸二重鎖の熱的安定性に依存するため、DNAプローブ長さならびに塩基配列の検討が必要があると考えている。加えて、蛍光性リガンドのナノ細孔内への導入についても、リガンドの疎水性、電荷、サイズ等に依存するすることが予想されるため、これらの検討結果をリガンド開発にフィードバックしていくことで、本系に適したリガンドの開発を図る。
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