研究課題/領域番号 |
22225003
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺前 紀夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (70114569)
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研究分担者 |
山口 央 茨城大学, 理学部, 准教授 (10359531)
西澤 精一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40281969)
佐藤 雄介 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90583039)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 化学センサー / バイオセンサー / 蛍光性リガンド / 核酸 / ナノ細孔 / 過冷却 / 小分子RNA |
研究概要 |
本研究では、ナノ細孔内を反応場とした蛍光性リガンドによる小分子RNA分析法を開発する。小分子RNAはその短鎖性ゆえ、既存のDNA,RNA解析法を直接流用することが困難である。本手法は、ナノ細孔内過冷却状態における効果的なリガンド結合反応を実現することで、小分子RNA解析に向けた基礎技術の開拓を目指す。 ナノ細孔内部では,溶媒水が0℃以下の温度であっても流動性を維持した”過冷却状態”となる。この過冷却水を利用すれば発熱性の錯形成反応効率を向上させることが期待される。そこで,シリカメソ細孔(細孔径3nm)内部における短鎖DNA2重鎖形成反応を蛍光励起エネルギー移動(FRET)測定から解析したところ,2塩基~6塩基のDNAフラグメントの2重鎖形成が-40℃~0℃の低温環境下で促進されることを見いだした。さらに,より大きな細孔径(70 nm)を持つアルミナ細孔内部においてクマリン色素とシクロデキストリンの包接錯体形成反応が,同様の温度領域で促進されることも見いだした。以上の実験結果から,ナノ細孔内では0℃以下の低温環境で錯形成平衡を調節可能であることが分かった。 一方、小分子RNA検出用蛍光性リガンドにおいては、昨年までにウラシル検出用リガンドジアミノピラジン誘導体を見出してきたが、本年度は網羅的小分子RNA解析に向けた他の核酸塩基検出に適用しうる新たなリガンドの開発を進めた。DNA脱塩基部位結合能を有するプテリジン骨格に対して置換基改変を施した新規誘導体のRNA検出能を検討したところ、2-amino-6,7-pteridine の4位にアミノ基を導入した誘導体がRNA二重鎖中脱塩基部位対面のシトシン塩基に対する高い選択性ならびに強い結合力を示すことを見出した。詳細な相互作用解析の結果、得られたシトシン結合能は電子供与性であるアミノ基の導入によりプテリジン環N1位の塩基性度が上昇し、シトシンとの相補的な水素結合面を形成することに起因することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小分子RNA解析の実現に向けて、「蛍光性リガンドの開発」と「ナノ細孔内過冷却状態を利用した分子認識反応場としての利用」に関してともに重要な基礎的知見が得られている。リガンド開発においては、候補化合物の置換基改変により新たなRNA塩基識別リガンドの開発が可能であることを見出し、リガンドの小分子RNA解析の適用範囲を拡大している。一方で、ナノ細孔内の過冷却状態を用いて、モデル系として有機小分子-シクロデキストリン包接反応が効果的に進行し、また温度低下に伴い包接反応が促進されることを実証した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られて基礎的知見を踏まえて、蛍光性リガンドの進化ならびにナノ細孔内過冷却状態における小分子RNA検出法の構築を行う。具体的には、DNA脱塩基部位に結合しうるリガンド骨格への置換基改変により、アデニン、グアニンに対する有用な検出リガンドを設計し、すべての核酸塩基検出に適用しうるリガンド群を創製する。さらに見出したリガンド群をシアニン色素などとのコンジュゲート化により高感度RNA塩基識別が可能な発蛍光応答型リガンドへと進化させていく。一方、ナノ細孔内過冷却状態における小分子-核酸プローブのハイブリダイゼーションならびに形成される二重鎖への結合反応に関して、リガンドの結合に伴う蛍光応答を観測することで、小分子RNA検出能を評価するとともに、本系に適した核酸プローブならびにリガンドの機能を検討し、これらの検討結果を改めてリガンド開発にフィードバックしていく。
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