研究課題/領域番号 |
22225004
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
碇屋 隆雄 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (30107552)
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キーワード | 選択的合成・反応 / 錯体・有機金属触媒 / 不斉合成・反応 / 触媒設計・反応 / 環境調和型反応 |
研究概要 |
われわれは、金属とともに配位子が触媒サイクル中で構造変化しつつ直接に基質の変換に関与する協奏機能触媒の開発、応用展開を推進している。本年度は、構造、反応性の両面で多様な協奏機能触媒を多数合成した。具体的には、金属α位にNH基をもつCp*配位子のテザー部位にアミン配位子を組み込んだハーフサンドイッチ型ルテニウム錯体や、金属β位にNH基をもつオキシム、ヒドラゾンなどブレンステッド酸性度の異なる非アミン系配位子をもつ協奏機能錯体のライブラリーを構築した。さらに、金属-配位子協奏部位を分子内に二つ組み込んだ、軸不斉を有するC2対称型キラル二核アミン錯体を新たに設計合成した。一連の錯体について、化学量論的な脱プロトン化反応や、ケトン類の水素移動型還元反応に対する触媒活性などを調べ、協奏機能触媒としての可能性を評価した。その結果、スルホニルヒドラゾン配位子をもつハーフサンドイッチ型ルテニウム錯体が、アリルアルコールを用いたアニリン類、アルコール類のアリル化に対して高い触媒活性を示すことが明らかとなった。また、金属配位圏近傍にプロトン供与部位を2つもつピンサー型ビス(ピラゾリル)ピリジン配位子を新たに開発し、この配位子をもつ鉄錯体が、ヒドラジンのN-N結合切断反応に対して触媒活性を示すことを見いだした。誘導体を用いた詳細な検討により、この反応が、ピラゾール配位子とヒドラゾンの間でのプロトン共役電子移動を鍵として進行することを明らかとし、多プロトンと多電子の移動を必要とする窒素分子の還元に資する基礎的知見を得ることができた。なお,繰り越し予算を用いることにより,N-N結合活性化の反応機構に関する鍵となる上記知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金属とともに配位子が構造変化を伴うことで触媒的分子変換を可能にする協奏機能触媒として、金属のα位だけでなくβ位にNH基を有するキレートアミン配位を有する金属錯体へと展開できることを明らかにしたことは、大きな進展である。具体例として、金属β位にNH基をもつオキシム、ヒドラゾンなどブレンステッド酸性度の異なる非アミン系配位子をもつ協奏機能錯体や、金属配位圏近傍にプロトン供与部位を2つもつピンサー型ビス(ピラゾリル)ピリジン配位子をもつ鉄錯体を新たに開発できた。これらの錯体は1電子1プロトンだけでなく多電子多プロトンの供与も可能であり、多プロトンと多電子の移動を必要とする窒素分子の還元に資する重要な知見であり、触媒的窒素固定化の可能性を示す重要な結果である。さらに、Cp*配位子のテザー部位にアミン配位子を組み込んだ金属α位にNH基をもつハーフサンドイッチ型ルテニウム協奏機能触媒が水素化触媒活性を有すること,さらに酸素元素をテザー部位に導入したアレンルテニウム触媒が水素化活性と水素移動還元活性の両機能を有することが明らかになるなど触媒構造と機能との相関を解明する重要な成果が蓄積できたことは評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の結果、構造、反応性の両面で多様な協奏機能触媒が得られるとともに、その構造と機能の相関を明らかにしている。これらの成果を基盤として今後は、各々の協奏機能触媒の特性を活かし、本研究計画の最終目標である水素、酸素、二酸化炭素、水、窒素など遍在小分子の活性化、ならびに触媒的化学変換に重点を置き、研究に取り組む。
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