研究課題/領域番号 |
22226002
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宗片 比呂夫 東京工業大学, 像情報工学研究所, 教授 (60270922)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光励起磁化才差運動 / スピンフォトニクス |
研究実績の概要 |
(1) Co/Pd多層膜構造 層厚の異なる様々な試料の磁化を系統的かつ精密に調べ、界面磁性の存在を明確化することができた。光励起磁化才差運動の発現機構として、励起電子系からスピン系への超高速エネルギー流入効率がPd層の層厚低下とともに増大する実験データを示し論文化した。 (2) 光励起磁化才差運動発現の非熱的過程の検証 磁化才差運動開始までの遅れ(いわゆる孵化時間)と励起光条件(波長と強度)との因果関係を系統的に明らかにし短報として出版した。熱的過程と非熱的過程に関して行ったオランダグループとの共同研究を論文化した。 (3) (Ga,Mn)Asにおけるテラヘルツ領域光制御 1ピコ秒程度の時間領域で第2励起光パルスを試料に照射した場合に起こりうる効果をポンプ・プローブ法を駆使して実験的に調べた。その結果、孵化時間内に第2励起パルスを試料に照射すると、才差運動開始が遅延することを明らかにした。 (4) スピン光メモリーの試作 高屈折率ガラス基板上にSiO2とGdFe一層ずつ堆積させた構造を作製し、SiO2から染出す光による磁気光学効果測定用装置を自作した。加えて、斜め入射配置におけるCo/Pd多層膜の光励起磁化才差運動を研究し入射角度80度以上においても才差運動励起できることを世界に先駆けて明らかにした。 (5) 弾性励起 第二世代のCCD顕微鏡構築を完了し、(Ga,Mn)As薄膜の磁気ドメイン観察および光励起磁化反転実験を遂行した。加えて、新規に雇用した研究員と協働して第三世代のCCD顕微鏡の構築を遂行し、極微小光励起による磁化才差運動の発現に成功した(第62回応用物理学会春季学術講演会にて2015年3月11日発表)。 (6) 光スピントロニクスデバイス 円偏光切替型スピンLEDの作製と実証実験、ならびに、結晶性アルミナトンネル層の作製に関する実験結果を論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピンフォトニクスデバイスの研究に関しては、研究員と大学院学生の成果が論文化できるようになってきたことからもわかるように、ようやく軌道に乗ってきた。光励起に関する研究に関しても超短時間領域での強磁性半導体と強磁性金属との間の本質的な差異が明瞭になってきた。Co/Pd積層構造において特徴的な光励起現象が得られた点は大変励みになっている。一方で、弾性波励起に関する研究は、PZT単結晶表面にCo/Pd多層膜および(Ga,Mn)Asを堆積した複合構造の作製を遂行したが、試料作製は困難を極めた。
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今後の研究の推進方策 |
スピンフォトニクスデバイスの研究に関しては、円偏光切替えの高速化(目標1MHz)および室温動作化をめざす。光励起に関する研究に関しては、強磁性半導体と強磁性金属との間の本質的な差異の理論的説明に取り組み、各論レベルでの論文化をめざす。一方で、弾性波励起に関する研究は、(Ga,Mn)Asに静的歪を印加した場合の実験データを元手にして弾性波励起を想定した場合のエネルギー収支を考察する方向で論文化をめざすとともに今後継続可能な実験を考察する。
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備考 |
出版された学術論文誌、学会発表リストが掲示されています
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