研究実績の概要 |
光励起に円偏光を用いたポンププローブ法をSTM用の新しい変調方法と組み合わる手法を詰めることで,スピンダイナミックスの微弱なトンネル電流信号を検出し可視化する技術を確立した。まず,ポッケルスセルを制御し,ポンプ光とプローブ光の円偏光を右回りと左回りの間で1MHz変化させる。加えて,両者の間に1kHzの差を持たせると,ポンプ光とプローブ光の右回りと左回りの円偏光の割合が1kHzで変化することになる。この変調をロックイン検出に用いることで,スピンの信号のみを感度良く検出することが可能となった。同手法を量子構造のスピンダイナミックスの測定に適用し得られた結果がNature Nanotechnologyに掲載された(Probing ultrafast spin dynamics with optical pump-probe scanning tunneling microscopy, Nature Nanotechnology 9, 588-593 (2014))。同時に,同冊子でMax Planckのグループにより,これまでにない新しい世代のSTM技術の登場として評価され紹介された(Scanning probe microscopy: Close-up on spin coherence, Nature Nanotechnology, News & views 574-575)。本プロジェクトの成果に対して,26年度島津賞,27年度文部科学大臣表彰を受賞した。また,これら結果に対し12件の招待講演を受け,25件の一般講演,解説記事等とあわせて成果を発信した。
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