研究課題/領域番号 |
22226005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
遠藤 勝義 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90152008)
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研究分担者 |
打越 純一 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90273581)
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キーワード | 形状測定 / 高精度ミラー / 非球面ミラー / 法線ベクトル / ナノ精度 / 形状誤差 / 走査型形状測定装置 / 5軸同時制御 |
研究概要 |
第三世代放射光施設やX線自由電子レーザー、波長13・5nmの極紫外光を用いたリソグラフィー、多くのデジタル映像機器からは、多種多様の形状を持つ高精度ミラー・レンズが要請されている。本研究の目的は、平面から平均曲率半径10mm以下の自由曲面の形状を、測定精度1nm PV以上、スロープエラー0.1μrad以下、測定時間5min/sample以下で測定できる法線ベクトル追跡型高速ナノ形状測定法を開発することである。提案した形状計測法の原理は、レーザーの直進性を活用し、光源から出射されたレーザービームがミラーに反射されて、光源の位置にある検出器(QPD)の中心に戻るように2軸2組のゴニオメータを制御して、ミラーの任意測定点(座標)の法線ベクトルを測定することから形状を求める。法線ベクトルの測定から形状を求めるため、従来の干渉法と異なり基準面を必要とせず、原理的に測定形状に制限がなく、自由曲面の絶対形状測定が可能になる。 高速ナノ形状測定装置の精度を支配するロータリーエンコーダを産業技術総合研究所の国家標準器を用いて絶対校正した結果、各ロータリーエンコーダは、装置取付け時の偏心や負荷の影響を考慮しても校正の確からしさは±0.12μradであった。また、QPD上でレーザー光強度がガウス分布に近づく光学配置を波動光学シミュレーションに基づき設計し、平均曲率半径10mmから平面までの形状測定を可能にする光学ヘッドを新たに製作した。そして、校正したロータリーエンコーダと新規光学ヘッドを搭載した高速ナノ形状測定装置を完成した。 そして、本装置によって、R=400mm, 1000m凹球面ミラーとR=50mm凸球面ミラー、平面ミラーの形状を測定した。 R=400mm凹球面ミラーの測定結果は、再現性がPVlnm以上で、フィゾー干渉計による結果と、それぞれの誤差範囲内である5nmPV以下で一致した。一方、R=1000mm凹球面ミラーとR=50mm凸球面ミラー、平面ミラーの形状測定に関しては、再現性は、1nm PV以上に至っていない。5軸のすべての運動誤差と測定環境の安定性を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成19~22年度科学研究費基盤研究(A)から引続き開発しているラスタースキャン型プロトタイプ機および試料B軸回転型高速ナノ形状測定装置の二つの形状測定装置を完成した。それぞれの特徴を活かした凹・凸球面と平面ミラーの測定が可能になった。再現性は、測定環境の向上で目標が達成できる。また、系統誤差は、装置の組立誤差の測定が必要であり、その手順は明らかである。
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今後の研究の推進方策 |
形状測定の再現性に関しては、測定環境における空気の密度分布の変動を高度に制御することによって、1nmPV以上を達成することができる。さらに、形状測定の絶対精度を保証するためには、装置の組立誤差に起因する系統誤差を明らかにするとともに、ゴニオメータと並進ステージの組立誤差をそれぞれに測定し、系統誤差を定量的に明らかにする。特に、光学系2軸と試料系2軸のゴニオメータの相対的運動誤差を測定することが不可欠である。測定した系統誤差に基づき測定値を補正する校正データベースを構築する。さらに、一部の測定ができない組立誤差に関しては、自律校正法を確立する。そして、本データベースを用いて、形状誤差が既知の基準球や基準平面ミラーを形状測定することから、本装置の性能を評価する。また、次世代の非球面レンズ用金属金型の形状をナノ精度で測定する。
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