研究課題/領域番号 |
22226009
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
吉川 信行 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (70202398)
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研究分担者 |
藤巻 朗 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20183931)
日高 睦夫 財団法人国際超電導産業技術研究センター, 超電導工学研究所, 室長 (20500672)
前澤 正明 独立行政法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス研究部門, 研究グループ長 (40357976)
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キーワード | 超伝導材料・素子 / 先端機能デバイス / 低消費電力 / 超高速情報処理 / デバイス設計・製造プロセス / 超伝導回路 / ジョセフソン素子 / 集積回路 |
研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続きSFQ回路の低消費電力化のための基礎技術の確立を行なった。 横浜国立大学では、断熱モードSFQ回路の動作速度、動作余裕度ならびに消費電力などの基本性能を数値シミュレーションにより評価し、回路パラメータとこれら基本性能との関係を明らかにした。その結果、±30%の動作余裕を持つ断熱モードSFQ回路のパラメータ条件を明らかにした。また、熱雑音を考慮した回路シミュレーションを行いて断熱モードSFQ回路のエラーレトを評価する方法を確立した。断熱モードSFQ回路による各種論理ゲートを提案し、それらの動作性能を評価するとともに、実験により動作機能の検証を行なった。 名古屋大学ではインダクティブバイアス法によるSFQ回路の低消費電力化法を確立するための基礎研究を行った。数値解析及び実験で、電源電圧、バイアス抵抗、バイアスインダクタンスを変化させ、シフトレジスタ等の動作余裕、動作周波数、誤り率などを調べた。その結果、適切な回路パラメータでは、消費電力1/10としても十分低い誤り率で45GHz程度まで正常動作が得られることが分かった。ISTECとAISTでは、低消費電力回路を可能とする微細Nb接合技術の確立を行なった。微細化に際してコンタクトホールにより接合と上部配線との超伝導コンタクトを取ることが困難となるため、CMP平坦化によりコンタクトを取る方法を検討した。この結果、面積0.3μm^2の接合に対して58mAの臨界電流値を持つ超伝導コンタクトを形成でき、この方法が微細Nb接合形成に対して有効であることを確認した。また、横浜国立大学および名古屋大学が設計した低消費電力回路の作製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先の震災により、つくばのAISTならびにISTECの超伝導集積回路プロセス設備が大きな被害を受けた。この間、プロセスの復旧と集積回路作製条件の最適化をチーム内で結束して行ない、1年で集積回路プロセスの信頼性がほぼ元通りになった。この間、集積回路の試作はできなかったが、シミュレーションによる研究を進め、十分な成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、SFQ回路の低消費電力化を実現するための研究項目として、(1)断熱モードSFQ回路、(2)熱雑音低減化法、(3)インダクティブバイアス法、(4)ゲート間配線技術、(5)非同期アーキテクチャ、に関する研究を実施する予定であった。2年間の研究を通して、(1)の方法を用いることで、もっとも効率的に低消費電力化が可能であることが明らかとなった。震災によるプロセスの中断と残りの研究期間を考慮し、今後は、(1)の研究項目について集中的に研究を行なうことが妥当であると判断し、研究計画の再構築を行なう。
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