研究課題/領域番号 |
22226010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中北 英一 京都大学, 防災研究所, 教授 (70183506)
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研究分担者 |
鈴木 賢士 山口大学, 農学部, 准教授 (30304497)
坪木 和久 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (90222140)
大石 哲 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (30252521)
川村 誠治 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所, 主任研究員 (10435795)
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キーワード | 偏波レーダー / ビデオゾンデ / 降水量予測 / 降水量推定 / ゲリラ豪雨 |
研究概要 |
(1)偏波レーダーとビデオゾンデの同期観測実験(沖縄): 沖縄県粟国島にXバンド偏波レーダーを設置し、従来までのCバンド偏波レーダーとタイアップした観測を実施した。さらに、昨年度開発した新型ビデオゾンデ受信機を用いることで、複数のビデオゾンデを連続放球するという全く新しい試みを実施した。 (2)都市圏における積乱雲の発生・発達に関する観測実験(京阪神): 申請時には都市域観測はゾンデ落下位置によっては重大事故を招きかねないため不可能と考え滋賀県信楽MU観測所での観測を想定していたが、ゾンデ落下位置をコントロールすることを前提に、実は夢として描いていた「温帯域の豪雨を対象に都市域における積乱雲の発生・発達をターゲットとした同期観測」へ一挙にアドバンスした挑戦的観測に着手した。Xバンド偏波レーダー・雲レーダー・GPSの観測網を設置した。特に大阪湾という洋上に設置したGPS観測によって、海洋上の水蒸気の挙動を捉えることに成功した。 (3)ビデオゾンデ観測システムの汎用化: ビデオゾンデの自動画像処理ソフトとして、粒径、断面積、周長などの基本的な形状の情報を自動で解析できる画像処理ソフトを開発した。 (4)雲微物理過程の解明: ビデオゾンデ観測によって粒子の形態に関する新たなパラメータで解析することで、対流性雲の発達段階初期には球状に近い霰粒子が卓越し、成熟期から衰退期に向かうにつれて不規則な形状に変化していることを明らかにした。今後、偏波レーダーによる粒子種類判別によって積乱雲の発達段階を推定できることにつながる知見であることを示した。 (5)偏波レーダーから混在状態の推定と氷粒子混合比の推定 すでに開発済みである降水粒子の複数種類の混在状態の推定手法を用いて、混在状態の存在比率を求め、レーダー反射因子によって量の制約をかけることで、氷粒子混合比を推定する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた研究開発項目は順調に進めることができている。特に、複数のビデオゾンデ受信機を用いた連続放球による豪雨の発達過程を捉えられたことの知見は大きい。加えて、申請時には都市域観測はゾンデ落下位置によっては重大事故を招きかねないため不可能と考えていたが、ゾンデ落下位置をコントロールすることを前提に、実は夢として描いていた「温帯域の豪雨を対象に都市域における積乱雲の発生・発達をターゲットとした同期観測」へ一挙にアドバンスした挑戦的観測に着手した。この点により、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、大規模フィールド基礎観測実験の発展に関して、汎用型ビデオゾンデ受信システムを開発したことで、複数のビデオゾンデの連続放球や多地点放球など観測の幅が大きく広がったため、ビデオゾンデと偏波レーダーによる雲微物理情報のマッチアップの研究ステージから、降水システムの理屈を知るための研究ステージへと移行していく。加えて、都市圏でのビデオゾンデ観測に向けて、落下位置をコントロールする手法を構築していく。第二に、観測実験から得られた知見を予測モデルの雲物理過程へ反映し、さらに観測情報のデータ同化によって降水予測精度の向上を図る。第三に、都市域での観測網を設置したことを活用して、集中豪雨のみならずゲリラ豪雨も対象として、実用化を意識した研究開発を実施していく。
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