研究課題/領域番号 |
22226011
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
貝沼 亮介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20202004)
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研究分担者 |
村上 恭和 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30281992)
大沼 郁雄 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20250714)
大森 俊洋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451530)
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キーワード | 形状記憶合金 / 相変態 / 状態図 / マルテンサイト変態 / 極低温 |
研究概要 |
(1)基本変態特性評価(電気抵抗、磁気特性、変態潜熱など):H23年度に予定していた変態特性の評価を行った。NiMn基系では、NiCoMnGaやNiCoMnAlなどの合金系について東京大学物性研の強磁場施設を利用して磁化測定をおこない、50Tもの強磁場によりマルテンサイト変態が誘起されることを確認すると共に、磁場誘起応力の温度依存性を明らかにした。その結果、NiCoMnGa系では、NiCoMnIn系と異なり、低温における磁場ヒステリシスの拡大が殆ど生じないことを突き止めた。また、H23年度に見出されたFeMnAlNi系についても、磁化測定や熱分析によって、母相、マルテンサイト相の磁化特性やマルテンサイト変態の全容を明らかに出来た。 (2)機械特性評価(超弾性特性、兄弟晶界面や晶癖面の移動度など):Ni過剰TiNi系について低温での超弾性特性を評価した。その結果、TiNi系では低温で応力誘起変態の応力ヒステリシスが異常に拡大することがわかった。また、正変態開始応力と逆変態終了応力から臨界平衡応力の温度依存性を見積もったところ、通常の格子振動エントロピーの温度依存性と類似した関係が得られることを確認することができた。 (3)相変態の組織学的評価:23年度に導入したTEM用低温応力印加ホルダーを利用してマルテンサイト変態を生じるペロブスカイト系セラミックスについて組織観察を行い、ホルダーの性能評価を行った。その結果、ヘリウム温度においても、応力を印加した状態で問題無く組織観察できることを確認した。 (4)熱力学的解析と組織シミュレーション:磁場や応力下でのクラジウス―クラペイロンの関係や比熱測定からNiCoMnGaやNiCoMnAl系における変態エントロピー変化を評価することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械特性評価を実施し、調査結果の分析を行い、研究成果取りまとめを行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)基本変態特性評価(電気抵抗、磁気特性、変態潜熱など):計画する全合金系に関して、研究を遂行する。 (2)機械特性評価(超弾性特性、兄弟晶界面や晶癖面の移動度など):計画する全合金系に関して、研究を遂行する。本年度は、Cu-Al-Mn系でありながら既に測定した6M構造とは異なる2H構造のマルテンサイト変態に関して低温実験を行うと共に、一定応力下で温度変化させる等、今までと異なる手法を用いた実験も実施する。 (3)相変態の組織学的評価: TEM低温応力印加ホルダーを利用して以下の研究を推進する。①NiTiやNiTiFe:合金に出現するプレマルテンサイト相の観察と応力下のその場観察。②NiCoMnIn合金の極低温域におけるプレマルテンサイト組織や応力誘起変態組織のその場観察。 (4)熱力学的解析と組織シミュレーション:磁場や応力下でのクラジウス―クラペイロンの関係を利用して、(1)や(2)で得られた実験結果から各合金系における変態エントロピー変化の温度依存性を推測する。また、実験で得られた比熱実験データに基づき、自由エネルギーの温度依存性を定量的に評価し、磁場やプレマルテンサイトの形成が及ぼす熱力学的寄与を明確にし、熱変態停止現象についてのさらなる理解を深める。
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