研究概要 |
本年度は,まずアメリカのテキサスA&M大学に赴き,保管されているDSDP/ODP堆積物コア37本から堆積物試料の採取を行った.試料採取は0.5mごとに1試料の割合で行い,本年度は3,254個の試料を確保した.確保した試料は,乾燥させたあと粉末化して分析試料とした.これらの試料から1,495試料を選別し,本年度購入した粉末X線回折装置(XRD)と蛍光X線分析装置(XRF),および本研究室が所有する誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて,鉱物同定と全岩化学分析(主成分元素およびレアアースを含む微量元素)を行った.その結果から,太平洋全域における高レアアース含金属堆積物(ΣREY=400~2,000ppm)の大まかな分布を明らかにすることができた.この結果をみると,高レアアース含金属堆積物は南太平洋東部および北太平洋中央部に広く分布し,その層厚は10~70mに達する.これらが分布域に一様に分布すると仮定すると,その資源量は陸上鉱床の埋蔵量の1,000倍を超える莫大なものであることが明らかとなった.また,鉱物同定結果および全岩化学分析結果から,含金属堆積物のレアアースは,熱水起源の鉄マンガン懸濁物質や火山砕屑物起源のフィリップサイトによって吸着・濃集していることが示唆される.これらの結果は,レアアースの新たな供給源確保という点で日本の将来を左右する最重要課題であるため,既にNature Geosience誌に投稿を行っており,現在査読中である.
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