研究課題
本年度は,前年度までに確保された3,254個の試料について,粉末X線回折装置(XRD)と蛍光X線分析装置(XRF),および誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて,鉱物同定と全岩化学分析(主成分元素およびレアアースを含む微量元素)を行った.その結果から,太平洋全域における高レアアース含金属堆積物“レアアース泥”(REY = 400~2,000 ppm)の大まかな分布を明らかにすることができた.この結果をみると,レアアース泥は南太平洋東部および北太平洋中央部に広く分布し,その層厚は10~70 mに達する.これらが分布域に一様に分布すると仮定すると,その資源量は陸上鉱床の埋蔵量の1,000 倍を超える莫大なものであることが明らかとなった.また,鉱物同定結果および全岩化学分析結果から,レアアース泥中のレアアースは,熱水起源の鉄マンガン懸濁物質や火山砕屑物起源のフィリップサイトによって吸着・濃集していることが示唆される.この研究成果は,2011年7月4日に英国のNature Geoscience誌の電子版に掲載された.このレアアース大鉱床の発見のニュースは,当日の国内のほとんどすべての主要紙の1面や朝7時のNHKニュースでもトップニュースとして報道され,ロイター,BBC,ウォールストリートジャーナルなどの海外主要メディアにも大きく取り上げられた.
1: 当初の計画以上に進展している
本研究により,太平洋の広い範囲に新たなレアアース資源が存在することが明らかとなり,その成果をNature Geoscience誌に発表することができた.また,この成果は当日の国内のほとんどすべての主要紙の1面や朝7時のNHKニュースでもトップニュースとして報道され,ロイター,BBC,ウォールストリートジャーナルなどの海外主要メディアにも大きく取り上げられるなど,社会に大きなインパクトを与えた.
今後はより詳細に太平洋のレアアース泥の分布範囲を明らかにしていくともに,日本の排他的経済水域(EEZ)内のサンプルの調査も行う予定である.またそれに加えて,レアアースの濃集機構の解明や,実際の開発(揚泥・製錬法)に向けた研究も行っていく.
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http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2011/070401.html