研究課題
今年度は前年度に引き続き,太平洋およびインド洋から採取された堆積物コア5,446試料について,粉末X線回折(XRD),蛍光X線分析装置(XRF)および誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS)を用いた基礎記載・全岩化学分析を行い,地球科学データセットの構築につとめた.その結果,インド洋にもレアアース泥が存在することが明らかになった.また,前年度同様,海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で南鳥島周辺海域で2回の調査航海を計画・実施した.MR13-E02航海 (2013年12月10日~12月24日)ではEEZの北部から3本,KR14-02航海 (2014年1月20日~2月5日)ではEEZ北西部から4本のピストンコアを採取した.これら1,470試料についても,現在鉱物同定・全岩化学分析および解析を進めている.また,放射光を用いた分析の結果,レアアース泥中のアパタイトにレアアースが濃集しており,体積後のレアアースホスト相はアパタイトであることが明らかになった.LA-ICP-MSを用いた予察的な検討の結果によると,アパタイトは15,000~20,000ppmに達するレアアース濃度を持っている.南鳥島に分布する超高濃度レアアース泥には粒径が大きいアパタイトが大量に含まれるため,粒径選鉱により品位を大きくあげることができる可能性が示唆された.また,レアアース泥(超高濃度泥含む)について,リーチング条件を詳細に検討した結果,「0.5mol/L 塩酸,室温,5分程度の短時間」で90%以上のレアアースを抽出できることが明らかになった.また,希釈材に模擬海水を用いても回収率はほとんど変わらないことも分かった.
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者らは,2013年3月に南鳥島EEZ内に総レアアース濃度が6,000ppmを超える「超高濃度レアアース」が存在することを発見し,国内外で三度大きな反響を呼んだ.今年度も2回の調査航海を行い,南鳥島EEZ内での資源ポテンシャル評価および有望海域の選定に向けて,研究を進展中である.また,インド洋からもレアアース泥が分布することも発見し,これも産経新聞や日本経済新聞によって報道された.また,平成25年4月に閣議決定された新しい「海洋基本計画」の中でも,早速レアアース泥は海底鉱物資源の一つとして盛り込まれ,『将来のレアアース資源としてのポテンシャルを検討するための基礎的な科学調査・研究を行う』ことが明記された.さらに.平成25年2月から計4回に渡ってJOGMEC主催の「南鳥島海域のレアアース泥に関する勉強会」が開催され(研究代表者らも委員として参加),11月には今後3年間における調査・研究実施計画が策定された.それに加えて,東京大学が中心になり,MODEC,東亜建設工業,太平洋セメント,三徳,IHIなどの企業との共同で,実開発に向けたコンソーシアムの設立が予定されている.以上のように,本研究の目的である「資源ポテンシャルマッピング」「有望海域の選定」「政策提言」については,当初の計画以上の成果が見込まれていると断言できる.
平成26年度も,基本的には当初の計画通りに研究を進展させていく.最終年度である平成26年度は,これまでに確保された堆積物試料(総計6,916試料,南鳥島試料含む)の基礎記載・全岩化学分析を完了させ,地球化学データセットの構築を行う.構築されたデータセットを用いて,太平洋全域および南鳥島周辺海域におけるレアアース泥の3次元分布状況を明らかにし,資源ポテンシャルマッピングを完成させる.そして,開発に最適な有望海域の選定を行う.特に研究代表者らが発見した南鳥島EEZ内の超高濃度レアアース泥について集中して検討を行い,実開発に向けた開発エリアの選定を行う予定である.また,膨大な地球化学データセットを用いて独立成分分析による解析を行い,レアアース泥の成因について最終的な解釈を行う.さらに,本研究で得られたデータや情報を政府機関や企業と共有することで,南鳥島レアアース泥開発の実現を目指していきたいと考えている.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 5件)
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