研究実績の概要 |
最終年度である本年度は,これまでに採取した太平洋(37本,3,254試料),インド洋(26本,2,192試料)および南鳥島周辺海域の堆積物コア試料(25本,1,470試料)について,基礎記載および全岩化学組成分析を完了させた.それにより,以下の結果が得られた. (1)太平洋のレアアース泥は,南東太平洋および中央太平洋に広く分布しており,南東太平洋では総レアアース濃度が1,000~2,000ppm,中央太平洋では400~1,000ppm程度であることが明らかになった。また,インド洋でも1,000ppmに達するレアアース泥が確認された.さらに,日本のEEZである南鳥島周辺海域において,総レアアース濃度が5,000ppmを超える「超高濃度レアアース泥」が存在していることを発見した. (2)XAFSやμ-XRFによる微小領域分析結果から,レアアース泥中のレアアースホスト相はアパタイトであることが明らかとなった.さらに各種リーチング実験を行った結果「0.5mol/L 塩酸,常温,5分程度の短時間」の条件でほとんど全てのレアアースを回収できることが分かった. (3)独立成分分析による統計解析の結果,レアアースを濃集する成分として「リンに富む成分」「鉄・マンガンに富む成分」「海水起源成分」が抽出された.これらの成分の新生代における時空間分布の復元と,試料の化学組成および海洋におけるレアアースの沈積フラックスを統合的に検討した結果,レアアース泥の生成に重要な要素は堆積速度であることが明らかとなった. (4)本研究の成果は,テレビや新聞で大きく報道され,国内外で反響を呼んだ.その結果,2013年4月に閣議決定された海洋基本計画にレアアース泥の項が加えられ,3ヶ年にわたる研究調査計画が策定された.また,JOGMECや海技研主催の「レアアース泥勉強会」も行われた.さらに,研究代表者らは2014年11月に「東京大学レアアース泥開発推進コンソーシアム」を設立し,国内企業11社と実開発に向けた共同研究を進めている.
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