研究課題/領域番号 |
22226016
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井頭 政之 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (10114852)
|
研究分担者 |
片渕 竜也 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (40312798)
原田 秀郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主席 (80421460)
中村 詔司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (90421461)
岩本 信之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (70391307)
木村 敦 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究副主幹 (30360423)
堀 順一 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (30362411)
鬼柳 善明 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80002202)
|
研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
|
キーワード | 原子力エネルギー / 核変換処理 / 長寿命核廃棄物 / 中性子捕獲断面積 / 核データベース |
研究概要 |
本研究では、大強度陽子加速器施設の物質・生命科学実験施設に設置されている中性子核反応測定装置(ANNRI)、東工大ペレトロン、京大炉ライナックを用いた長寿命核廃棄物の中性子捕獲断面積等の高精度測定、測定結果の統一的理論解析等を通して、長寿命核廃棄物の核変換処理技術開発に必須な中性子捕獲断面積データベースを高精度化することを目的としている。 ANNRIのGeを用いた測定では、Cm-244,246のデータから中性子捕獲断面積を決定し、論文として発表し、「第45回日本原子力学会賞」論文賞を受賞した。また、遮蔽強化してTc-99及びPd,Se,Snの安定同位体について測定を行った結果、過去に報告されている共鳴には誤ったものがあることを見出した。ANNRIのNaIを用いた測定では、Np-237データから中性子捕獲断面積を決定し、論文として発表した。また、データ収集系を高速度化し、中性子エネルギー上限を100keV迄高めた。さらに、Tc-99,I-129及びSe,Snの安定FP核種の測定を行った。中性子ビーム高度化等では、Xステージコリメータによってビーム形がシャープになっている事を測定により確認した。さらに、中性子透過法による全断面積測定法を高度化し予備測定を行った。 東工大における測定では、Pd-104,105,106,108について550keV付近、Ba-138について30keV付近で中性子捕獲実験を行い中性子捕獲断面積とガンマ線スペクトルを導出した。 京大における測定では、Se-74,76,77について熱~keV領域で中性子捕獲実験を行い、捕獲断面積を導出した。 理論解析では、Pd安定同位体に対して、東工大での測定結果に光吸収断面積の情報を加えて評価を行い、評価済核データライブラリJENDL-4.0と比較して、keV領域の捕獲断面積が8~24%小さくなることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ANNRIでの測定では、東日本大震災の影響で約9ヶ月の予期せぬ測定中断が生じたにもかかわらず、マイナー・アクチニド(MA)核種及び長寿命核分裂生成物(LLFP)核種の中性子捕獲反応断面積の測定が当初予定通りに現在進捗している。MA核種については、加速器中性子源を用いた世界初となるCm-244とCm-246の測定に成功し、平成24年度「日本原子力学会賞」論文賞を受賞した。Np-237, Am-241についても中性子捕獲反応断面積を導出し、日本原子力学会論文誌や核データ国際会議(ND2013)での招待講演等で報告している。LLFP核種の中性子捕獲反応断面積導出については、測定データの取得を行い、現在は最終的な解析の途中である。LLFP核種のサンプルには複数の不純物同位体核種等が含有されるため、対象核種以外にも含有安定同位体等の測定も実施した。その結果、安定核分裂生成物核種について、多くの新しい共鳴を発見するとともに、従来の共鳴ピークが間違って同定されていることを系統的に見出し、当初の研究以外にも、中性子共鳴を用いた核種分析研究分野に大きなインパクトを与える可能性があり、今後慎重に解析を進めて発表する予定である。 東工大ペレトロン加速器施を用いた測定も当初予定通り進捗し、keV中性子領域の捕獲反応断面積と世界初となる捕獲ガンマ線スペクトルを導出している。また、京大電子線形加速器施設を用いた測定も当初予定通り進捗し、新しい共鳴を発見するなど当初予定を超えた成果を得ている。 また、理論解析も当初予定通り進捗し、電気双極子ガンマ線強度関数中にピグミー共鳴を発見する等の成果を得ている。また、Pd同位体のkeV領域の捕獲断面積が、評価済み核データライブラリJENDL-4.0の断面積と比較して8-24%小さくなることを明かにした。
|
今後の研究の推進方策 |
ANNRIでは、平成23年3月中旬から東日本大震災の影響で約9ヶ月の予期せぬ測定中断が生じたにもかかわらず(3ヶ月の中断は当初からの予定であったので実質6ヶ月間)、マイナー・アクチニド(MA)核種及び長寿命核分裂生成物(LLFP)核種の中性子捕獲反応断面積の測定を、測定順番の変更は行ったが、当初予定通りに実施している。この様な状況なので、ANNRIでの測定では当初予定核種については計画通りに実施する。なお、平成25年度は大強度陽子加速器施設の陽子ビーム出力増強のため6ヶ月間程度ANNRIを使用できないが、測定時間を十分に調整して対処する予定である。なお、出力増強後には測定時間の短縮が期待できる。 東工大で実施する予定であったPd-107とZr-93の30keV付近の測定については、ANNRIのNaI検出器のデータ収集系の高速度化に成功して中性子エネルギー上限を100keV迄高めることができたので、ANNRIのNaIを用いて行うことに変更する。東工大で測定予定のその他の核種については、当初計画通りに実施する。また、京大での測定も当初予定通り実施する。 理論解析については、各施設での測定結果が続々と出てくるので、それらの結果を基に当初予定通りに実施する。
|