研究課題
架橋型の反応を示す高分子材料に高エネルギー加速粒子を入射すると、付与されるエネルギーによりイオントラック内に架橋反応点が選択的に分布し、分子間架橋反応といった不均一な反応を介してゲル化を誘起する。この単一粒子ナノ加工法(SPNT)により、さまざまな合成高分子・生体高分子・物質内包性高分子を自由にナノ構造化し、それぞれを組み合わせて多機能ナノ構造体をユニバーサルに形成しえる全く新しいナノ構造材料創成技術として確立することが本研究の最大の目的である。今年度の実施計画は、本研究の5つの実施グループにおいて、1.生体高分子、特にタンパク質をベースとしたナノ構造体の形成(大阪大学)、2.高分子膜の自由細孔形成とエッチング拡張メカニズムの解明(原子力機構)、3.セラミックナノ材料形成と制御の基礎概念の確率(原子力機構)、4.有機・金属ナノ粒子ハイブリッドナノ構造体形成技術の提案(東北大学)、5.クラスターイオンを用いた複数原子の加速粒子による相互作用の解明(原子力機構)について実施した。特に、タンパク質はSPNT法の適用において、優れたナノ構造化特性を示し、タンパク質固有の生体適合性、たとえば特定化合物に対する親和性や酵素活性といった機能を維持したまま、ナノ構造化を行うことが可能であることが明らかとなった。同時に、このタンパク質ナノワイヤーを従来の合成高分子ナノワイヤーと自由に連結することや、分解できることを明らかとした。一方で、貴金属ナノ粒子を内包した架橋高分子ナノ構造体を形成することにも成功した。これらのナノ構造体はそれぞれを自由に組み合わせることが可能であり、目的とする多機能ナノ構造体形成のための基盤技術として大きな成果となった。
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