研究課題
(1)DNA低メチル化状態でコピー数の増加するシロイヌナズナのレトロトランスポゾンを複数同定している(Tsukahara et al 2009 Nature)。このうちの一つと配列の類似したトランスポゾンTal1を形質転換したところ新たな転移がおこり、セントロメアの反復配列に特異的に挿入することがわかった(Tsukahara et al 2012 Genes Dev)。配列の違うセントロメアでも同じ挙動を示すことから、セントロメアのエピジェネティックな情報を認識していると推察される。また、DNA型トランスポゾンVANDAL21は既知の因子Mtatoerと似た転移酵素を持つが末端逆位配列を持たない。この因子は転写開始点付近に優先的に挿入する。また形質転換によってこの因子を活性化する実験系を構築した(未発表)。さらに、別のトランスポゾンで、セントロメア近傍のrDNA領域に特異的に挿入するものを見いだしているので(未発表)、これを制御する因子を探索している。(2)抑制クロマチンの目印であるヒストンH3リジン9のメチル化を除去する働きのある因子IBM1(increase in BONSAI methylation)の突然変異体の効果をゲノムワイドで調べている(Saze et al 2008 Science, Miura et al 2009 EMBO J, Inagaki et al 2010 EMBO J)。ibm1変異体における発生異常表現型を抑圧する変異の中でDNAメチル化に影響しないものを見いだし、バルク分離集団のゲノムシークエンスにより、その原因遺伝子の候補を同定した。現在はその確認を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
多くの生物でセントロメアには反復配列が多く分布するがその形成機構や効果についてはほとんどわかっていなかった。今回セントロメアに特異的に挿入する因子がみつかったことで、これらの研究が可能になった。他にも特徴的な因子が複数同定できており、今後の展開が期待できる。また、遺伝子からヘテロクロマチンを排除する因子であるIBM1の表現型を抑圧する新奇因子が同定できた。これは、この新たな経路の理解を進める大きい進展と考える。
(1)Tal1のセントロメア特異的挿入に関与する宿主因子同定のための順遺伝的選抜を行う。(2)Tal1の内部にテロメアを入れたものを用い、テロセントリックな染色体を作る系を構築する。(3)rDNAに優先的に飛び込む因子を見いだしているので、これを制御する因子を探索する。(4)ibm1変異による発生異常を抑圧する変異の解析を進める。具体的には、原因遺伝子を同定するとともに、変異体におけるクロマチンの変化をゲノムレベルで知る。また、ibm1による発生異常を仲介する標的遺伝子を探す。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
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