研究課題/領域番号 |
22227002
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
筒井 和義 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20163842)
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研究分担者 |
緒方 勤 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40169173)
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キーワード | 視床下部ホルモン / 脳下垂体ホルモン / 発現制御 / シグナル伝達 / 生殖 / 生殖行動 / 生殖機能異常 / 分子進化 |
研究概要 |
本年度に以下の主たる成果を得た。 「GnIH生殖抑制作用の分子機構の解析」:生殖腺刺激ホルモン産生細胞を用い、GnIHはGiタンパクと共役するGnIH受容体を介してアデニル酸シクラーゼとマップキナーゼによるシグナル伝達を抑制して生殖腺刺激ホルモンの合成を抑制することを明らかにした。 「GnIH発現の分子制御機構の解析」:GnIHニューロンにはメラトニンとグルココルチコイドの受容体が発現していることを見いだした。メラトニンはGnIHの発現と放出を制御することやストレスはグルココルチコイドを介してGNIHの発現を誘導することを明らかにした。 「生殖腺におけるGnIHの局所作用機構の解析」:生殖腺に発現するGnIHは局所作用によリステロイド合成細胞のcAMP合成の低下を引き起こし、3beta-水酸基脱水素酵素の発現を低下させ、プロゲステロン合成を抑制することを明らかにした。 ジGn璽Hによる生殖行動の発環制御機構の解栃」:G蛋}田はG醸Hニューロンを介して生殖行動の発愛を挿制することを明らかにした。 「GnIH遺伝子のノックダウンによるGnIH生理作用の解析」:GnIH siRNAによるGnIH遺伝子ノックダウンを行い、GnIHは生殖行動や自発運動などを抑制することを明らかにした。また、GnIH遺伝子ノックアウト動物を作成した。 「GnIHによるヒト生殖機能異常の分子機構の解析」:GnIH遺伝子とGnIH受容体遺低子の変異がヒトの生殖機能異常の要因であることを明らかにするために、生殖機能異常症のDNA検体を採取すると共に変異解析法を確立させた。 「動物界におけるGnIHの起源と分子進化の解析」:無顎類のヤツメウナギの脳からGnIHを同定して、構造と生理作用を明らかにした。GnIHの起源は最も下等な脊椎動物である無顎類に遡ることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GnIHは生殖を制御する新規脳分子である。本研究は、霊長類から無脊椎動物にまで広く存在すると考えられるGnIHを同定し、「GnIHによる生殖制御における新規脳内分子機構の解明」を目的として実施している。事前の十分な準備と適切な研究計画により、当切の目的を超える研究の進展があり、GnIH作用の分子機構、GnIH発現の分子制御機構、GnIHの認源と分子進化に関する多くの発見がなされた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「GnIH作用の分子機構」、「GnIH発現の分子制御機構」を継続して解析すると共に、GnIH遺伝子ノックアウト動物を用い「GnIH作用の生理的意義」の本格的な解析を進める。GnIHの起源は最も下等な脊椎動物である無顎類に遡ることを明らかにしたので、「GnIHの起源と分子進化」に関する研究では原索動物(ナメクジウオ)と無脊椎動物(タコ)の脳からGnIHとGnIH遺伝子を同定して、GnIH遺伝子のシンテニー解析を行う。生殖機能障害の原因となる生殖腺刺激ホルモン分泌異常にはGnIHとその受容体が関与すると考えられる。「GnIHによるヒト生殖機能異常の分子機携」の解析では、生殖機能異常症のDNA検体を用い、ヒトのGnIH遺伝子とGnIH受容体遺伝子の変異解析を行う。
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