研究課題
酵母ミトコンドリアのタンパク質の交通管制システムについて,ミトコンドリアの膜構造,脂質,ERとの関係なども含めて,その働く機構を理解することをめざした。1 ミトコンドリアのNアンカー型外膜タンパク質Om45が,そのN端側膜貫通(TM)配列を介して外膜にサイトゾル側から組み込まれるのではなく,膜間部側から外膜に組み込まれる膜トポロジーを有することを確かめた。Om45はまず内膜のTIM23複合体と内膜膜電位の働きを使って,外膜TOM40複合体のチャネルを完全に透過し,その後膜間部側から外膜に組み込まれるという,まったく新しい経路を使って外膜に組み込まれることが分かった。2 ERとミトコンドリアをつなぐテザリング複合体ERMESがERとミトコンドリア間で脂質輸送を担うかどうか,論争となっている。そこでERMESの構成因子であるMdm12とMmm1を大腸菌に発現させて精製する条件を確立した。Mdm12について結晶化を行い,X線構造を決定した。Mdm12には深い疎水性ポケットがあり,そこに大腸菌由来のリン脂質が結合していることが分かった。界面活性剤で脂質を除去したMdm12についてもX線構造を決定した。疎水性ポケットの疎水性残基を親水性残基に置換すると酵母の増殖能に欠損が生じた。Mdm12が脂質結合タンパク質であることはERMESが脂質輸送に関わる事を示唆する。そこでさらにin vitroで,リポソームおよび単離ミトコンドリアを用いて,Mdm12およびMmm1-Mdm12複合体について脂質輸送アッセイを行い,特に後者に高い脂質輸送能があることを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初はタンパク質の交通を中心にミトコンドリアの生合成の分子機構を解明することをめざしていた。今回, ER-ミトコンドリアのテザリング部位ERMES複合体の構成因子Mdm12が脂質結合タンパク質であることを明らかにできたことから,論争となっているERMES複合体の脂質輸送への関わりを証明できたと考えている。これはミトコンドリア生合成を理解する上で,タンパク質トランスロケータを中心とするタンパク質の交通という観点に加えて,脂質の交通という観点からも切り込めることを示唆する物であり,予想しなかった発展である。
研究代表者が名古屋大学から京都産業大学に異動し,さらに分担者の田村康(名古屋大学)が山形大学に異動したので,今後は京都産業大学と山形大学で,効率よく研究を推進したい。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 6件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 11件) 学会発表 (46件) (うち国際学会 2件、 招待講演 22件) 図書 (1件)
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