研究課題
ミトコンドリア外膜のTOM複合体は,約1000種類ものミトコンドリアタンパク質の入り口として機能する「タンパク質専用の外膜透過装置」である。しかしTOM複合体は高分解能の精密構造がいまだに決定されておらず,各タンパク質がどのように集合して複合体をつくり,各タンパク質がどのように前駆体タンパク質を効率よく膜透過させるかなどの問題は未解決であった。今回,in silicoの構造予測とin vivo部位特異的光架橋法を組み合わせて, TOM複合体のサブユニット間相互作用をマッピングし,複合体の全体構造を明らかにした。複合体の中心因子Tom40がつくる円筒構造の内側は,前駆体タンパク質が外膜を透過するための通り道として機能し,プレ配列を持つ前駆体およびプレ配列を持たない疎水性前駆体用に,別々に最適化された通り道が用意されていた。Tom40のN末端領域は円筒構造内を貫通して膜間部側でシャペロンタンパク質を集め,疎水性前駆体を効率良く受け渡していた。さらにTOM複合体にはTom40から成る孔が3つの完成型と,孔が2つの準備型の2つの状態があり,それらを可逆的に変換することで新しいTom40を古いTom40と入れ替え,完全な機能をもつ複合体を維持していることが示唆された。こうして,TOM複合体が多様な前駆体タンパク質を効率よく取り込むための膜透過装置として働く構造的基盤が明らかになった。一方で,外膜のαヘリックス型膜タンパク質の局在化経路については,まだ不明なことが多い。Nアンカー型外膜タンパク質Om45は,サイトゾル側から特定の自発的にN端側膜貫通配列により外膜にアンカーされると考えられていた。しかし今回,Om45がまずTOM40複合体を介して外膜を通過し,続いて膜間部側から外膜に挿入されること,この経路は内膜TIM23複合体と内膜の膜電位を必要とすることを見出した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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