研究概要 |
1)AQP4の構造に基づいて解明した接着機能を担うことが分かった310へリックス部分だけを変異した遺伝子改変マウスを作製した結果、野生型や単純なノックアウトマウスではほとんど接着して変化が無かったグリアルラメラの膜が、接着構造部分だけを変異したAQP4を発現するマウスでは、コネキシンを発現している部分以外、完全に接着できなくなっていることを明らかにした。これにより、AQP4の細胞接着が生理的条件でも働いていることを確認した。 2)Na+チャネルのC-末端の構造を解析することによって、この部分が形成する4本のヘリカルバンドルとその安定性が、不活性化を加速することを解明した(Nature Commun., 3, 793 pp1-8 (2012))。さらに電子線結晶学による構造解析研究を進めて、電位感受性Na+チャネルの2つのコンフォメーションの構造を解析した(論文投稿中)。 3)無脊椎動物のイネキシンのクローニングを行って発現系を確立し、機能解析と構造解析を行った(J. Biol. Chem., in press)。 4)神経筋接合部で行われる現象を模倣するように、スプレー法でアセチルコリンを受容体に吹きかけ、その直後に液体エタン中に落下させて急速凍結することにより、AChRのチャネルが開いた構造を解析した(J. Mol. Biol., 422, 617-634 (2012))。 5)pH4という酸性条件での構造解析から、H+,K+-ATPaseによるプロトンのポンピングにおいて、中性条件近くでは1分子のATPを分解することにより2個のH+とK+をポンピングするが、酸性条件ではプロトンの勾配が大きくなり、1分子のATPを分解するときに1個のH+とK+をポンピングすることを、構造解析に基づいて解明した(PNAS, 109, 18401-18406 (2012))。
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今後の研究の推進方策 |
1)水チャネルの構造機能解析:水チャネルAQP4の接着する機能を担う310へリックスを接着能が無いAQP1のループに変異させたAQP4を発現するマウスの解析を進めることで、AQP4の生理的機能の解明を目指す。 2)電位感受性Na+チャネルの構造機能解析:Na+チャネルの構造をより高い分解能で解析し、Na+イオン選択性の機構を解明する。 3)ギャップ結合チャネルの構造と機能解析:イネキシンの構造解析の分解能を向上させることで、イネキシンにより形成されるギャップ結合とコネキシンのギャップ結合の違いを解明する。 4)アセチルコリン受容体の構造機能解析:研究目標を達成した。 5)H+,K+-ATPase の構造機能解析:H+,K+-ATPaseと新しいインヒビターとの複合体の構造を解析することにより、H+をポンピングする機構を深く理解する。
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