研究概要 |
本課題は、生物運動システムの各階層に特徴的な化学・力学フィードバックループを明らかにすることを通して、生物運動の制御基盤を解明しようというものである。H.22年度は、1)MCAKと呼ばれるキネシンファミリーに属する微小管脱重合タンパク質が、脱重合に伴って力を発生する分子モーター(ATPase)であることを証明した("The bidirectional depolymerizer MCAK generates force by disassembling both microtubule ends",Oguchi,Y.et al.,in press)。このことは、微小管+端における素線維がGTP加水分解を伴ってカールすることが染色体の分裂運動の原動力であるとする染色体分配機構の通説の再考を促すものである。2)筋収縮系が中間活性化条件で示す自励振動現象(SPOC)を説明する理論モデルを構築し発表した("A theory on auto-oscillation and contraction instriated muscle"Sato,K.et al.,Prog.Biophys.Mol.Biol.,2011)。SPOCについては、長年の研究成果をまとめたレビューを発表した("Contractile system of muscle as an auto-oscillator"Iskiwata,S.et al.,Prog.Biophys.Mol.Biol.2011)。3)HeLa細胞を2枚の平板状のカンチレバーはさみ、瞬間的な圧縮力を加えると、加える力の方向によって染色体分配を加速したり減速したりするという著しい現象を発見し、その力学・化学共役のメカニズムを明らかにした(Itabashi,T.et al.,論文準備中)。
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