研究課題
A-to-I RNAエディティングは、二本鎖特異的アデノシンデアミナーゼ(ADAR)の作用により、アデノシン(A)残基が脱アミノ化され、Iへと修飾される機構である。I修飾はヒトの脳で特に多く、脳神経疾患でI修飾が変動することから、高次なレベルでの生命現象に関わると考えられている。I修飾はcDNA上でAからGへと塩基の変化が観測されるため、ゲノムDNAとcDNAの配列を比較することで原理的にI修飾部位を同定することが可能である。実際に、次世代シーケンサーによる大量配列解析により、ゲノムとトランスクリプトームの配列を比較するRNA-DNA difference (RDD)と呼ばれる手法が盛んに行われ、ヒト転写産物から網羅的にI修飾が予測されたが、RDD法はマッピングエラーを十分に排除することができないことが判明し、実際RDD法でマッピングされた部位の90%以上が偽陽性であると指摘されている。私たちは、イノシン特異的な化学修飾と逆転写反応を組み合わせた生化学的なI修飾部位の同定法(Inosine chemical erasing, ICE法)を開発した(Nature Chem Biol., 2010)。さらにICE法を次世代シーケンス解析と組み合わせたICE-seq法を開発し、ヒト成人脳のトランスクリプトームにおいて、24,000か所以上の新規イノシン化部位を特定した(Genome Res., 2014; Nature Protocol, 2015)。I修飾によりアミノ酸配列が変化するタンパク質や、イントロンのI修飾がエキソン化を防ぐ役割があることなどを見出している。大腸菌およびヒトにおいてtRNAの37位に存在するN6-methyl-N6-threonylcarbamoyladenosine(m6t6A)のN6メチル基を導入する酵素TrmO/TRMOを同定した(NAR, 2014)。TrmOはβバレル構造を持つ全く新しいクラスのメチレースであることが判明した(class VIII methyltransferase)。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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