本研究では、申請者のこれまでの脂肪細胞に関する研究知見や実験手法を発展させながら、従来から申請者が断片的に観察していた組織型褐色脂肪および非組織型褐色脂肪の発生機構と生理的意義の解明を、動物個体と細胞レベルで系統的に行うために、発生工学的手法、蛍光ならびに磁気共鳴(MRI)イメージング法を駆使した動物個体レベルでの新しい検出系、評価系を開発するとともに、ヒト由来多能性幹細胞を活用して詳細な分子機構を解析することを目的とした。 本研究では(1)食品などの環境因子による組織型褐色脂肪および非組織型褐色脂肪の発生・発達機構をin vivoで解析するために、(1-a)褐色脂肪特異的に発現する遺伝子の遺伝子発現を制御する領域(プロモータ)を利用し、褐色脂肪のみを特定のレポーター(蛍光タンパク質(FP)・リジンリッチタンパク質(LRP))でラベルしたトランスジェニックマウスの作製、(1-b)リジンリッチタンパク質レポータートランスジェニックマウスの作製を行い、蛍光ならびに磁気共鳴(MRI)イメージングの手法を用いた動物個体もしくは組織の立体画像を構築、褐色脂肪の発生・分化過程の空間的・定量的な検討を行っている。さらに、(2)新規褐色脂肪細胞株を用いた褐色脂肪発生・発達の分子細胞生物学的なin vitro解析のため、(2-a)褐色脂肪への分化誘導処理を行ったhMADSの遺伝子発現を、経時的に未分化な状態のhMADSとDNAマイクロアレイ法やサブトラクションPCR法などにより比較、hMADSの褐色脂肪分化に必須な調節因子の同定を、(2-b)生体内エネルギー代謝を制御することが知られている甲状腺ホルモン(T3)が強く影響を及ぼしているhMADSにおけるUCP-1の発現変化を指標として、アドレナリンなどの内因性、またイソプレノイドなどの食品由来の外因性の調節因子について検討を行いつつある。
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