研究課題/領域番号 |
22228003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
新山 陽子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10172610)
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研究分担者 |
鬼頭 弥生 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50611802)
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70195444)
栗山 浩一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50261334)
春日 文子 国立医薬品食品衛生研究所, その他部局等, その他 (40183777)
工藤 春代 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60452281)
秋津 元輝 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00202531)
高鳥毛 敏雄 関西大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20206775)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リスク認知 / リスクコミュニケーション / 放射性物質の健康影響 / 健康食品のリスク / リスクリテラシー / 農業倫理 / 食品事業者倫理 / 食品技術者のプロフェッション |
研究実績の概要 |
■課題1A)放射性物質の健康リスク知覚構造(Web調査)、食品由来リスク知覚の基本構造モデル、同国際比較について構造方程式モデリングにより分析した。放射性物質の健康リスク知覚構造を左右する「イメージ想起」の内容と源泉について2014年2月~6月まで3段階の調査を実施し、2015年3月に学会報告した。B)放射性物質の健康影響に関する市民の情報理解について対立情報提供が及ぼす影響、批判的思考態度、科学リテラシーの影響についてWeb上で実験した。C)農産物の購買行動について第7回目のWeb上の選択実験を実施し、原発事故の風評行動の変化を分析した。 ■課題2:放射性物質の健康影響に関する双方向リスクコミュニケーションモデルのフォーカスグループによる検証結果について、論文を執筆し投稿した。同じく、同モデルの普及段階について企業の実施例をとりまとめ、学会で共同報告した。フォーカスグループコミュニケーションにおいてとりまとめた科学情報の要約版をWeb上で提供し、リスク知覚の変化を見る実験を実施した。健康食品のリスクとコミュニケーション結果について、公開シンポジウムを開催した。 ■課題3:フードコミュニケーションテキスト作成には食生活の実態把握が必要であるが、統計的に解析できるデータがないことから、詳細な食事実態のWeb調査を実施した。 ■課題4:農業者と消費者を結ぶ倫理に関するこれまでの検討成果をもとに学会においてセッションを開催し、出版準備を行った。公正取引を食品事業者倫理と経済学(産業組織論上の市場支配力)、独占禁止政策から検討し、卵、牛乳について小売-卸売間の市場支配力を計測した。 ■課題5:食品技術者のプロフェッション確立のための海外調査結果を報告書にまとめ、学会誌論文として公表した。自治体の専門職配置調査結果の一部を専門誌に掲載、イギリスの学会で報告し、投稿論文を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究費を繰り越し、本報告が最終年度になるため、研究課題の達成度自己点検評価は記載しない。 なお、繰り延べの理由は以下であった。放射性物質の健康影響リスク知覚構造調査の結果、「イメージ想起」が全体に影響を与える鍵となる因子であることがわかり、その内容と源泉を調査する必要が生じたが、2013年12月の調査手法の検討途上で、当初予定していた手法ではイメージの抽出が困難であることが判明した。それに対して新規の画像による調査法を用いることにより対処できることがわかり、同手法を導入し2014年2月より調査を開始したが、当該調査法にともなう事例数確保のため追加調査の必要が生じた。結果は、イメージ想起の内容と源泉を明瞭に特定でき、大きな成果を上げ、学会報告や国際シンポジウムの招待講演においても好評を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
同上の通り、研究費を繰り越したので、本報告は最終年度になる。なお、2013年度末には今後の推進方策を以下とした。 ■課題1 リスク認知構造基礎研究:A)リスク認知構造解析:①国際比較研究、放射性物質のリスク認知構造分析結果の投稿原稿作成(継続)。②Web実験による放射性物質の科学情報提供と双方向リスコミモデル実験の効果を比較分析する。③リスク認知上「イメージ想起」の源泉調査を継続・分析。B)市民の情報理解:リスク情報提供手法、情報理解研究の成果から、リスク認知バイアスを低減しうるリスクコミュニケ-ション情報提供手法とリスクリテラシー教育指針を検討する。C)消費者行動分析:食品の放射性物質汚染への消費者の反応と買控え行動に関するWeb調査を継続し、結果をとりまとめる。 ■課題2 双方向リスクコミュニケーションモデルの提示と実施実験:放射性物質に関する普及実験結果のとりまとめ・国際誌投稿作業を継続する。食中毒菌による生肉食のリスクなど市民のリスク低減行動が求められるケースの実験実施を継続する。 ■課題3 フードコミュニケーションテキストの作成:テキストの基礎になる食生活調査結果をまとめる。体系、要素の検討を継続し、原稿依頼を行う。 ■課題4 食品関係者の倫理および倫理的関係の研究:A):食品事業ケーススタディの出版作業、食品安全学のテキスト草稿作成を継続。B):農業者と消費者を結ぶ倫理を欧米型の「市民」視点ではなく「生活者」視点に定めたことにもとづき、研究を収斂すべく、研究会、農業者/消費者グループへの質的調査を継続し、出版をめざして研究を進める。 ■課題5 食品技術者のプロフェッション基礎研究と制度構想:政府、専門職業間組織の食品安全・衛生業務と職員の専門性について日本、アメリカ等の海外調査を継続・まとめ、先進的な海外高等教育制度・カリキュラム等を分析しまとめる。
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