研究課題/領域番号 |
22228004
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
河野 友宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80153485)
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研究分担者 |
外丸 祐介 広島大学, 自然科学研究支援センター, 教授 (90309352)
鈴木 穣 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40323646)
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キーワード | エピゲノム / 生殖系列 / 次世代シークエンサー / 始原生殖細胞 / DNAメチル化 |
研究概要 |
本研究は、哺乳類の雌雄生殖系列におけるエピゲノム情報のリプログラミングを解明するため、遺伝子発現制御する主要因であるDNAメチル化の全貌を生殖細胞および胚において次世代シークエンサーを用いて明らかにするために実施した。 メチローム解析の結果、精子、卵子、DnmtL-K0卵子、さらにES細胞のメチロームマップを作成し329の卵子型メチル化差異領域(DMR)と349の精子型DMRを同定した。さらにmRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施し、マウス卵子においてmRNA転写量と遺伝子内のメチル化(Gene-bodyメチル化)に強い正の相関性を見出した(PLoS Genetics,2011)。さらに、卵子では低率ではあるがnon-CpGが存在すること、およびレトロトランスポゾンが高メチル化されていることを明らかにした。23年度から着手した胎仔始原生殖細胞におけるメチローム解析では、胎齢10.5日,13.5日および16.5日の雌雄始原生殖細胞(PGC)を用いて解析を実施した。これまでに、胎齢10.5日のPGCでは16-17%のCpGがメチル化されていたが、胎齢13.5日のPGCでは、2-3%にまで低下していることが判明した。また、雌雄PGCはほぼ同様のメチル化状態を示していた。しかし、胎齢16.5日の雄PGCでは、新規のメチル化が生じ始め、31%にまで上昇した一方、雌PGCでは変化は認められず、明確な雌雄差が形成されていた。この他、DNAはバイサルファイト法の改善に取り組み、より少量のDNAを用い、かつ精度の高い解析方法としてPBAT法が有効であることを確認した。さらに、マウス1番染色体領域に同定した新規インプリント領域(Gpr1-Zdbf2)におけるメチル化領域を見出し、また長大な新規インプリント転写産物同定した(FEBS letter 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次世代シークエンサーを用いたメチル化解析も順調に進行しており、膨大なデータのインフォマ解析も問題ない。間違いなく世界的にも最も膨大なデータ解析を実施しているグループである。
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今後の研究の推進方策 |
すでに精子・卵子のメチローム解析は終了したことから、始原生殖細胞における脱メチル化のプロセスの詳細な解析を進めている。今年度中に詳細な解析を完了させ、論文報告を目指す。さらに今後は、生殖系列におけるメチル化および脱メチル化に関与するシトシン残基のヒドロキシル化などの変化についても解析を展開する予定である。また、現在すでに発表されたデータを公開するためにブラウザーの構築を進めており、近々公開できる運びである。
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