研究課題/領域番号 |
22229002
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
清水 重臣 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70271020)
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研究分担者 |
小西 昭充 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (50381877)
吉田 達士 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (80315936)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | オートファジー / Atg5非依存性 / 癌 / 神経変性疾患 |
研究概要 |
オートファジーは、細胞が古くなった自己構成成分を消化、再利用する浄化機構であり、全ての細胞が普遍的に有している細胞機能である。本研究では、我々が発見したAtg5/Atg7非依存性の新規オートファジー機構を対象に、1、分子機構の解明、2、生物学的役割、3、Atg5依存性オートファジーとの相互作用、4、疾患病態への応用、に関して検討を行い、以下の成果を得た。 1、Atg5/Atg7非依存性オートファジー分子機構の解明:新規オートファジーは、哺乳動物において発見したものであるが、酵母細胞においても同様のマシナリーが存在することを発見した。また、遺伝学的解析により、新規オートファジー実行に必要な12分子を同定した。このうち、5分子において哺乳動物細胞ホモログが存在していた。現在、哺乳動物の新規オートファジー制御分子5分子に関してノックアウトマウスの作製が終了し、解析をはじめている。 2、生理機能解析: オートファジーは細胞死や細胞老化に直接関わっていることを発見した。特に、細胞老化を維持する時には、オートファジーによる蛋白質異化作用と蛋白質同化作用が共役して、同じ場所(TASCCと命名)で行なわれていることを発見した。 3、疾患、病態への応用:A.発癌;オートファジーの変調によって発癌が惹起されるメカニズムの同定に成功した。また、オートファジーを制御できる低分子化合物を投与することにより、抗腫瘍効果が得られることを見出した。B.神経変性疾患(ポリグルタミン病);(1)オートファジー変調細胞では、ポリグルタミンの蓄積がより顕著になること、(2)新規オートファジーの活性化によって、ポリグルタミン蓄積が改善すること、(3)複眼にポリグルタミンを発現させたショウジョウバエに、新規オートファジー誘導化合物を投与したところ、眼の異常が顕著に緩和すること、を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【新規オートファジー機構の解析】Atg5に依存したオートファジーは、酵母から哺乳動物細胞まで保存され、様々な生命現象に不可欠な細胞機能として広く調べられている。この間、Atg5が欠損することはオートファジーの破綻を意味するものと理解されてきた。しかしながら、本研究によって、Atg5に依存しないオートファジーも、酵母から哺乳動物細胞まで保存されていることが明らかとなった。この成果は、新規オートファジーの重要性をより深める結果である。即ち、この知見は、オートファジー研究手法のあり方を根本から変える成果であると考えている。 【オートファジーの生理機能解析】Atg5依存的オートファジーと非依存的オートファジーが共同して、様々な生理現象の調節に関わっているという知見も、前項と同様に、新規オートファジーの重要性を示すものである。 【『オートファジー病』の基本原理解析と評価法、治療法開発】発癌、神経変性疾患、炎症性腸疾患、血液疾患など様々な疾患にオートファジーの変調が関わっている事実は、これらの疾患の診断・治療に新たな局面を産み出すもので、臨床的に意義が大きい。即ち、新たなコンセプトに基づく疾患治療薬の開発に結びつくものと考えている。特に、申請者が研究中の化合物(抗癌活性を有する化合物とポリグルタミンを分解する化合物)は、今後の開発によって、新規治療薬としての可能性があるものとして期待される。
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今後の研究の推進方策 |
【1, 新規オートファジー機構の解析】1、これまでに作製した新規オートファジー関連分子のノックアウトマウスを解析する。2、酵母の遺伝学を用いて、さらに新たな分子を同定し、哺乳動物ホモログを探索する。3、新規オートファジー関連分子のノックアウトマウス由来の細胞を用いてオートファジー誘導時の生化学反応と形態変化を対応させる。これにより、コアのシグナル伝達機構を明らかにする。 【2, オートファジーの生理機能解析】1、既に作製を済ませた両方のオートファジーを可視化できるマウスを用いて、従来型オートファジーと新規オートファジーが、生体内のいつ、如何なる場所で、誘導されるかを解析する。 【3,『オートファジー病』の基本原理解析と評価法、治療法開発】発癌:(1)作製済みの新規オートファジー分子欠損マウスを用いて、これらのマウスの発癌リスクを調べる。また、その際に、発癌誘因となる細胞構造の異常を捕捉する。(2)各オートファジーの変調により修飾を受ける癌関連分子を探索する。(3)臨床の癌組織を解析して、新規オートファジー機能変調の有無や新規オートファジー関連分子の異常を解析する。神経変性疾患:(1)開発中の新規オートファジー誘導化合物をポリグルタミン病モデルマウスに投与し、その効果を検討する。薬剤安定性や薬効を基に、当該化合物を最適化する。(2)患者由来のサンプルを入手して、新規オートファジー関連分子の異常を解析する。(3)他の神経変性疾患や白血病や炎症性腸疾患等に付いても同様な検討を行う。(4)これらの各種疾患の臨床サンプルにおいて、新規オートファジー関連分子の異常を検討する。
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