オートファジーは、古くなった自己構成成分を消化、再利用する細胞の浄化機構であり、全ての細胞が普遍的に有している細胞機能である。本研究では、我々が発見したAtg5/Atg7非依存性の新規オートファジー機構を対象に、1、分子機構の解明、2、生物学的役 割、3、Atg5依存性オートファジーとの相互作用、4、疾患病態への応用、に関して検討を行い、以下の成果を得た。 1、Atg5/Atg7非依存性オートファジー分子機構の解明:昨年度までの研究で、新規オートファジー機構を制御する遺伝子を21遺伝子同定した。このうち、7分子は、直接シグナル伝達機構に関わっていることを見いだした。このうち、6分子に関してノックアウトマウスの作成に成功し、表現型解析を行なった。 2、生理機能解析:新規オートファジーを制御するUlk1を欠損したマウスの解析から、新規オートファジーが、胎児期における赤血球からのミトコンドリア除去に関わっている事を見出した。一方、成体マウスでは、Ulk1は関わっていないものの、Ulk1非制御型の新規オートファジーが重要であることを見いだした。 3、疾患、病態への応用:A.発癌;オートファジーを制御できる低分子化合物を見出し、その標的分子の同定に成功した。B.神経変性疾患(ポリグルタミン病);(1)新規オートファジーを活性化できる化合物を同定し、ポリグルタミン病モデルマウスに投与したところ、個体レベルでの有効性を認めた。また、この化合物の標的分子を同定した。
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