研究課題/領域番号 |
22229004
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小安 重夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90153684)
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キーワード | サイトカイン / リンパ球 / 自然免疫 / アレルギー / 感染免疫 |
研究概要 |
1)前駆細胞の同定とNH細胞の分化経路 IL-25受容体欠損マウスにおいてもNH細胞の分化が見られ、IL-25はNH細胞の分化には必要ないと結論された。一方、転写因子GATA3を欠損させるとNH細胞の分化が障害されることが明らかになり、GATA3がNH細胞のマスター転写因子であることが明らかになった。前駆細胞としては、いわゆるリンパ系前駆細胞の移植によって、NH細胞を欠損するγ_cRag2 2重欠損マウスにNH細胞を回復させられることが明らかになった。 2)他のTh2サイトカイン産生細胞との異同 野生型のNH細胞をコンジェニックマーカーを持つマウスに移植した後にIL-25を投与したところ、レシピエントマウスのnuocyteと思われる細胞がリンパ節へ出現したが、移植したNH細胞がリンパ節へ移動することはなかった。IL-33を投与した場合、nuocyteと思われる細胞はほとんど出現せず、一方で、NH細胞の数は増大した。この場合にもNH細胞はリンパ節には移動しなかった。以上のことから、NH細胞とnuocyteは異なる細胞であると結論した。 3)寄生虫感染における役割 寄生虫(Nippostrongylus brasiliensis)感染において、感染した虫体は肺を経由して後に腸管へ至るが、この肺ステージにおいて好酸球増多が観察され、この好酸球増多が寄生虫に対する感染防御において重要であることが知られる。NH細胞を欠損するγ_cRag2 2重欠損マウスにおいては肺における好酸球増多が誘導されない。そこへ野生型マウス由来のNH細胞を移入することで好酸球増多が回復した。これらの事実から、肺ステージにおいてもNH細胞が寄生虫感染防御において重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-7ノックアウトマウスの解析は遅れているものの、GATA3がNH細胞のマスター転写因子であることが明らかになったことは重要な成果と考えている。寄生虫感染におけるIL-25やIL-33の機能の解析は遅れているが、肺ステージにおける感染防御にもNH細胞が機能することを明らかにできたことは重要な成果である。その他はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Nuocyteの分化にRORαが重要であると報告されたが、NH細胞分化におけるRORαの機能、nuocyte分化におけるGATAの機能を検討することで、さらにNH細胞とnuocyteの異同が明らかになると期待されるまた、NH細胞の体内動態に関してはケモカイン受容体の発現パターンなども検討してゆく予定である。IL-25ノックアウトマウスやIL-33ノックアウトマウスが順調に増えてきたことから、さらにこれらのサイトカインの寄生虫感染における機能を解析していく予定である。
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