研究課題
1)前駆細胞の同定:ストローマ細胞株と骨髄中のリンパ球前駆細胞の共培養実験から、NH細胞の分化にNotchシグナルが必須であることが明らかになった。他の研究グループからはIL-25やIL-33の関与を示唆する報告があるが、IL-25とIL-33ダブルノックアウトマウスでもNH細胞は正常にすることから、IL-25やIL-33は分化に必要ないと結論した。2)他のTh2サイトカイン産生細胞との異同の検討:NH細胞に高発現するRORαがNH細胞と類似するnuocyteの分化に重要と報告されたがNH細の分化にも関与していた。ただし、RORα変異マウスにおいても少数の NH細胞が分化し、分化したNH細胞は正常な機能を持つことから、成熟NH細胞の機能にはRORαは必要ないと結論した。3)寄生虫感染におけるNH細胞の機能:IL-25とIL-33の機能の違いを検討した。IL-33の方がIL-25よりもNH細胞の活性化に重要であり、一方、nuocyteの活性化にはIL-25の方が中心的な役割を果たしていた。今後、実際の寄生虫感染モデルでの検討が必要である。4)食物アレルギーにおける NH細胞の機能:アラムをアジュバントとして卵白アルブミン(OVA)を腹腔内に免疫した後に、OVAを経口投与して誘導する食物アレルギーモデルと、コレラ毒素をアジュバントとして用いて経口的にOVAを投与して誘導する食物アレルギーの系を用いた検討を行った。前者のモデルではNH細胞の明確な関与は明らかにならず、既報の通り肥満細胞が中心的な役割を果たすことが示唆された。一方、後者のモデルにおいて、NH細胞が重要な役割を果たすことを示唆する結果が得られており、さらに検討中である。
2: おおむね順調に進展している
NH細胞の分化に関してはc-Kitが不要であることを示せた。また、Gata3の重要性を示すことができた。また、IL-25とIL-33の2重欠損マウスの作成が遅れたが、作成したマウスを用いIL-25とIL-33がNH細胞の分化に必要ないという結論を得ることができた。寄生虫感染に関しては、NH細胞の動員におけるIL-25とIL-33の機能的差異を検討し、IL-33の方がIL-25よりもNH細胞の活性化に重要であることを示せた。アレルギー反応に関しては、NH細胞が重要な役割を果たすことが示唆される食物アレルギーモデルを作成した。以上のことから、交付申請書に記載した目的に向けておおむね順調に進展していると判断した。
分化に関しては、自然リンパ球は全てリンパ球系の前駆細胞から Id2依存的に分化するが、 NH細胞に特異的な前駆細胞や、 NH細胞への分化に必要なシグナルは明らかではなく、この点を明らかにすることが必要と考えられる。寄生虫感染におけるNH細胞の機能については、実際の寄生虫感染モデルを用いて様々なサイトカインの機能を明らかにすることが必要である。さらに、ここで用いている寄生虫は経皮感染をした後に肺を通過して消化管へ移動するが、肺での防御に NH細胞が関わるかを明らかにすることも必要である。アレルギー反応におけるNH細胞の機能に関しては、喘息モデルや食物アレルギーモデルを用いてさらに検討をする必要がある。
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