研究課題/領域番号 |
22229006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 良三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60207975)
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研究分担者 |
眞鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 転写因子 / 動脈硬化 / 糖尿病 / 慢性腎臓病 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
本研究ではKLF転写因子ファミリーに注目して、心血管・腎・代謝疾患と癌の分子機構を解析するとともに、これら多様な疾患の背景にある共通した分子機序を明らかにする。組織特異的遺伝子改変マウス等を用いて、病態の発症・進展における機能的役割を明確にするとともに、KLF5が環境の変化に対して、細胞レベルでストレス応答と細胞内代謝を協調して制御する分子機構を解明する。KLF5と他のKLFを含む転写因子との相互作用に着目して転写因子のネットワークを同定する。これらの解析を統合して、長期に続く低レベルのストレスが、生活習慣病と癌を引き起こす分子機構を解明する。また、ストレス応答・炎症を直接の標的とする新しい治療法を開発することを目的とする。生活習慣病及び癌におけるKLF機能の解明を目指して、①心肥大・心不全、②骨格筋-心臓連関、③慢性腎臓病、④代謝疾患におけるKLF5並びにKLF6の機能解析を行い、KLF5が心腎連関に重要であること、KLF6が心筋細胞と線維芽細胞の相互作用に重要であることを見いだした。また、KLF5が視床下部で機能して食欲を調整していることと、視床下部ニューロン特異的Klf5ノックアウトマウスを作成して確認した。さらに、KLF6が脂肪細胞や肝細胞で機能し、代謝制御に重要であることを見いだした。また、KLF5が腸管上皮肝細胞で機能し、大腸癌に重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多くの研究計画は当初予定通りに進んでいる。その中でも特に、慢性腎臓病の検討から始まった計画は、心腎連関の全く新しいメカニズム解明に発展しており、当初は想定していなかった非常にインパクトの高い成果を挙げている。また、心臓における心筋細胞と間質細胞相互作用の研究は線維芽細胞からマクロファージへと広がり、心臓マクロファージが心臓の保護的応答に必須であることを明らかにするとともに、心筋細胞の代謝を制御するメディエータの同定にも成功した。これも当初の予定を大きく越える成果である。当初計画からの研究の発展により、研究計画を適宜変更することにより、様々な新奇のコンセプトを確立することが出来てきており、全体としては当初の予定以上に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1.生活習慣病におけるKLF機能の解明。①心肥大・心不全、動脈硬化、大動脈瘤におけるKLF。心筋細胞と線維芽細胞の相互作用を仲介する分子の同定を進める。心臓マクロファージと心筋細胞間の相互作用についても同様にメディエータを同定する。②慢性腎臓病と心腎連関。KLF5が腎臓で制御するメディエータの探索を行う。臓器連関の心血管疾患における意義を明確にする。③代謝疾患(骨格筋、脂肪、膵臓、視床下部)。KLF5による摂食調節について、AgRPニューロン特異的なノックアウトマウスを作製し、in vivoにおける意義を検討する。また、KLF5によるAgRPニューロンの機能制御機序をさらに検討する。④癌。腸管上皮肝細胞におけるKLF5の機能を明らかとし、癌化における意義も見当する。 2.ストレスと代謝応答のネットワーク解析。ChIP-seq、RNA-seq解析によりグローバルな遺伝子ネットワークを検討する。また、KLF5と核内受容体との相互作用の役割を検討する。 3.KLFネットワークの解析。脂肪細胞分化と成熟におけるKLF6の機能解析をさらに進める。4.新規治療法へのトランスレーション。本研究によって既に新しい治療標的の同定に成功している。これらへの介入による治療応用の基礎的検討を進める。
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