研究課題/領域番号 |
22229008
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
糸山 泰人 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 院長 (30136428)
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研究分担者 |
藤原 一男 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70280873)
中島 一郎 東北大学, 大学病院, 講師 (50333810)
三須 建郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00396491)
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キーワード | 脳神経疾患 / 視神経脊髄炎 / デビック病 |
研究概要 |
視神経脊髄炎(NMO)は疾患特異的なアクアポリン4(AQP4)抗体の発見以後、異同が議論されてきた多発性硬化症(MS)との相違が明らかになってきている。私共は本疾患が免疫介在性アストロサイトパチーという新たな疾患概念であることを提唱している。NMOの疾患概念確立、病態解明と治療法確立が本研究の目的である。 I.臨床的解析:(1) NMOの臨床解析では、若年発症例では視神経炎、高齢発症例では脊髄炎で発症することが多かった。発症から75カ月後には、18%の症例は両眼の重篤な視覚障害を、34%は100mの歩行が困難に、そして9%が死亡しており、予後不良であった。(2)NMOの非典型的所見として、発症前に血清CK値が高値を呈する症例が確認され、横紋筋に発現しているAQP4も本疾患の自己免疫の標的になっている可能性が示唆された。(3)妊娠出産と再発の関連を調査したところ、出産後6カ月間は妊娠前や妊娠中に比べて約4倍に再発率が上昇していた。NMOは女性患者が多く、この時期の再発予防が重要である。 II.NMOのアストロサイトパチーの病態解明:(1)剖検例ではNMO病変の辺縁ではアストロサイトが破壊され。そのcell debrisが多数みられた。(2)アストロサイトタンパクであるGFAPの髄液中の濃度は、NMOの急性増悪期には著明に上昇しており、特に脊髄病変で高値だった。またGFAP:MBP比はNMOではMSより有意に高く、NMOでは主にアストロサイトが破壊されていることが確認された。(3)過去の実験的研究では、AQP4抗体は補体を活性化してアストロサイトを破壊することが確認されているが、NMOの末梢血B細胞をサイトカインで刺激し培養系においてAQP4抗体産生を確認した。また急性増悪期の髄液中ではC5a濃度が有意に上昇していた。NMOの急性期における補体抑制療法の有効性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響で23年度の初めは、本課題の研究がまったくできなかった。しかしその後に(I)臨床データの検討、(II)アストロサイトパチーの病態解析ともに進めることができた。B細胞の免疫学的研究はこれから本格的に解析していくが、全体としては(I), (II)に関するH24年度までの目標を予定通りに達成することを目指して研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)1500例のAQP4抗体陽性例の臨床解析を進めていく。また、東日本大震災の再発や治療継続、ストレスなどに関する影響やNMOの脊髄炎に伴う疼痛の解析などを行う。 2)NMOの病態解析では、剖検症例や培養アストロサイトを用いて、アストロサイトの細胞傷害の詳細とAQP4抗体や補体の影響を詳細に検討していく。また末梢血中のB細胞のAQP4抗体産生に関わるサイトカインの組み合わせについて検討する。 3)NMOの治療に関する広範な文献検索を行い、治療効果と副作用を分析し基本的な治療方針を構築する。
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