研究概要 |
安全運転支援のため車両に搭載されたセンサからの情報に基づき障害物や前方車との衝突危険性を判断しドライバへの警告や自動で危険を回避するシステムを目指し,これまでは,論理データ空間を実現するためのセンサデータ集中管理システムおよびストリーム型データ管理システムを開発し,データ処理や通信に関するオーバヘッドの評価を行ってきた. 本年度は,地図データに関して欧州から世界標準として提案されているLocal Dynamic Map (LDM)において利用されているデータ構造を仕様書から解析し,そこで定義されているAPIを持つデータベースを構築した.次に,その中にストリーム型データ管理システムの機能を組み込んだ融合システムをPC環境上に構築し,複数車両の走行を模擬できるシミュレータからのデータを利用した処理性能評価を通して、システムとしての妥当性の検証を行った. また,PC環境ではなく2種類の組込み機器環境(LinuxおよびITRON)の上に,車載組込みシステム向けデータストリーム管理システム(eDSMS)を開発し,データベースクエリの定義で構成された安全運転支援アプリケーションから実ターゲットシステムのソースコードを生成する開発環境としての車載データ統合プラットフォームCloudiaの設計・開発を行った.そして,この設計方法に従って実用的な運転支援システム向けの車載データ処理ライブラリを実装し,センサ,アプリケーション変更時の車載データ処理ライブラリの変更を少なくできることを確認し,有用性を示すことができた. さらに,周辺車両や障害物の数が増加した際にも対応できるようなデータ処理のフィルタリング,および,効率的な衝突検知のアルゴリズムについての開発も実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ストリームデータを組込み環境において実現するデータストリーム管理システム(eDSMS)の開発に加えて,データベースクエリの定義で構成されたアプリケーションから,ターゲットシステムの資源を考慮した物理的実装を行うためのソースコード生成を含む開発環境を構築できたことにより,組込み環境においてストリーム処理技術を活用する方策を世界に先駆けて確立することができた.(優秀論文賞など複数の賞を受賞)
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,車両の位置や進行方向,速度を判断して,通常型データベースに格納された地図データをストリーム化し,カメラやミリ波,レーザレーダなどのセンサ情報を融合して処理するストリーム型データ処理方式を開発することで,実環境においても有効に動作する方式の実現を目指す.加えて,ストリーム処理技術の導入により,車載組込み環境のみならず,車外のセンターや利用者が持ち込んだ端末の計算資源や保持データを有効かつ容易に利用できる方式の検討も行う. また,ここでの開発の知見から得られた組込みストリーム処理技術,および,それに基づくLDMの実装技術をもとに,世界的に検討がなされている協調型ITSの標準化活動に貢献する.
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