研究概要 |
本年度はつもり抽出実験において「つもり制御」におけるロボットの動作から操縦者が「見まね」をするプロセスに着目し,この際の動作意図抽出過程における分節化を現象的に捉えるために,脳波計測によってCNV(随伴陰性変動)を検出することで操作者の集中度の時間変動を計測した.時間的に連続な運動を観察する見まねプロセスにおいて,どの区間を分節化された離散単位として予測・検出しているかをCNVを基準として同定することを狙った結果,事後応答として被験者が分節間の区切りと見なす特徴姿勢の直前まで集中を継続した後,脱集中を表す電位変動が再現性高く観測された.この現象は本研究の当初からの作業仮説である時間離散的な意識状態の間を意識下処理が遷移させていくプロセスにおいて,「次の行動意図」を立ち上げるタイミングに対応していると考えられる.特に繰り返しの見まね課題における想起による分節の検証において,特徴姿勢の記憶が一種の階層化を生じさせていることが観察されている.この階層化においては分節区切りの主体となる特徴姿勢と,各分節区間の分節動作の詳細を修飾・伝達するための副次的な特徴姿勢に分かれ,集中の高まりは主体となる特徴姿勢の出現に対応して高い相関を示していることが判明した.このタイミングと事後に一連の動画の離散化姿勢から選択される特徴姿勢の時間関係から,行動意図の生成と想起記憶の記銘・想起のメカニズムとの間に想定される機序について解明が進むものと期待される. また,離散分節単位でのつもり制御と,つもりの抽出・伝送については,その分節化構造が物理的時間の上限下限に対してどのような崩れ方をするのかについての基礎的検証をすすめ,行動の認識と再生の両側面からの物理的限界が分節構造に与える影響の構造化を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳波を用いた行動分節化区間の抽出については,当初の予定以上の成果を上げつつあるものの,つもり制御の工学的実装に必要となる計測精度には至っておらず,生体情報計測の精密化が必要となっている. また,つもり制御の工学的実装に向けた設計論においては,単発の行動分節単位の連続としての行動意図の抽出については順調に基礎的知見の集積とその構造化が進行している一方,全身運動への応用を考える中で,この構造化に並行する形で機能する歩行のような周期性の継続運動の存在についての検証が必要となってきている.
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今後の研究の推進方策 |
脳波を用いた行動分節区間の抽出については現象計測の精密化を図るため,脳波・筋電等の生体情報計測の専門家である情報通信研究機構・脳情報通信融合研究センター・主任研究員・鈴木隆文氏を研究の分担者として新たに加えて研究を進める. また,次年度はこれまでに対象としてきた太極拳や空手の演舞のような開始から終了までの流れを持つ行動に関する知見に加えて,随意動作の中でも,こうした分節化動作に対応しない要素として,周期動作の生成意図と個別動作分節の関係を検証する.このために,歩行動作からのつもり抽出課題について新たに検証実験を追加する.
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