研究概要 |
多様な触覚情報の統合を図るアーキテェクチャの開発では,回路構成エレメント数の低減を図るため,回路のネットワーク構造を複数例の設計・シミュレーションによる検討を行い,適切な回路を定め,プロトタイプを試作し,実験を行った。また分布型近接覚情報に関しては従来の研究開発がほとんどない状態であるため,分布型近接覚情報を取得可能なセンサの設計・試作・実験を行った。近接情報は,視覚情報および触覚情報の中間にあり対象物までの距離,物体の傾き,表面状態によって変化をするため,それを補正する情報処理方式ついての研究および特別な情報処理方式について研究開発を行った。 高感度・高速に滑りが事前に検出できる初期すべり覚センサの開発では,センサ構造の設計・試作,組込システムによるアルゴリズムの実験,そして各種状況における実証実験・評価および改良を行った。センサ上で物体を滑らせると,初期すべり時において複雑な出力変化が生じることを確認した。この出力変化を離散ウェーブレット変換(DWT)を用いて抽出し,法線力変化と初期すべりの分離を試みた。その結果,法線力変化の影響を受けにくい,初期すべり検出センサの開発に成功した。また,適切な閾値を設定することで,予荷重や材質変化によらず,初期すべりの検出が可能であることを確認した。最後に,平行グリッパに開発したすべり覚センサを装着し,把持力調整実験を行った。これより,重量が変化する物体の把持や,重量に応じた最小力での把持を実現し,本センサの有効性を示した。本年度は,高周波振動成分の発生要因については言及せず,その利用について述べた。現在は,仮説として物体と感圧導電性ゴム表面間で発生する固着領域とすべり領域の複雑な変化による振動が感圧導電性ゴムに伝播したため,または感圧導電性ゴムがせん断変形した際に発生する内部粒子の相互接触が複雑に切り替わったためと考えている。この他,システムの小型化を図るため,PSoCマイコンを用いた情報処理システムの構築を行い,識別性能評価と高速性の評価を行なった。また,試作した滑り覚センサを義手に実装した。
|