研究課題/領域番号 |
22240015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國吉 康夫 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10333444)
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研究分担者 |
長久保 晶彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 知能システム研究部門, 研究員 (00357617)
原田 達也 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60345113)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 知覚情報処理 / 知能ロボティクス / 感覚行動システム / 実世界行動データベース |
研究概要 |
人の動作は、その生成過程に、無意識の複数の感覚・運動協調が働いており、ある単一の目的を志向した最適な動作というよりは、複数の解釈が可能で多元的、冗長な動作を多く含む創発的過程である。ロボティクスの分野では、目的のエンドエフェクタの位置・姿勢が決まると、ある最適化された軌道を描くように制御がなされるのが一般的であるが、人の動作は、目的の動作を行いつつ、多様性含む。このようなロバストな動作生成原理を人の動作を計測・解析することで解明することが本研究の目的であり、そのために、人の動作とそれに伴う感覚情報を同時記録する計測装置の開発、自然な動作を蓄積したデータベースの構築、動作間の因果性解析に基づく生成メカニズムの解析を行う。 計測装置に関しては、被験者の手のモデルを製作し、各自の手のモデルと計測データを合成して、人の動作をコンピュータ上で再現することを可能とした。光学式モーションキャプチャと慣性式の独自開発した姿勢センサを用いて、手の関節軸の位置を推定し、姿勢センサデータの姿勢推定結果を用いて関節を曲げることで、手の動きを再現した。 手指の触覚センサについては、当初想定していなかった新しい問題が発覚し、対処することになった。柔軟性を実現するために基板をレーザカットによって特殊な形状を実現しているが、レーザの熱によって抵抗体表面に絶縁層が付着し、感度が悪くなるという問題である。センサ周辺の設計を見直すことで、レーザによる影響を軽減する方法を新たに導入した。 被験者の手の動きについて計測実験を行った。日常動作の例として、さまざまな道具を使用する際の手の動きを計測した。「はさみの使用」「紙を折る」「キャップを開ける」「ボールを投げる」など、手指の素早い動きや、隠れなどで目で見ることができない動作についても運動の再構成が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
触覚センサについて、想定していなかった問題が発覚し、その対処のために当初計画していた、自然な動作計測データベースの構築が間に合わなかった。問題自体は解決し、被験者実験用の触覚センサを製造している。
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今後の研究の推進方策 |
人が物体操作を行う際の、手指の感覚・運動データの蓄積とその解析を中心として、当初の研究目的である「身体運動・感覚経験の蓄積に基づいた新しい動作理解の理論」の構築を行う。 人の意思決定プロセスを調べるために、「自由に意思決定可能な状況」と「手順に従う状況」について、感覚・運動を計測して、その差異を調べるという方針をとる。一連の動作の中から、無意識の感覚運動調整が、どのように意思決定に寄与するかについて因果指標を用いて調べる。 行う動作として、卓上での片付けとし、さまざまな物体操作を含むものとする。物体の位置や片付け位置については、制限を加え、「手順に従って片付けを行う」場合と、「自由に意思決定する」場合について、カメラによる視覚データ、開発した触覚センサによる手の触覚データ、運動データを計測する。運動の違いが、感覚情報や環境情報、手順の有無やその与え方によってどのように変化し、意思決定が、無意識の感覚運動にどのように影響されているのか、予測可能性について定量化する。
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