研究概要 |
1)ナノ構造の最適化と情報処理回路への応用 積分発火型スパイキングニューロンモデルでのスパイクパルス入力に対するアナログ応答を生成するために,ナノディスクアレイ内の電子ホッピング伝導を利用する.ニューロンモデルに必要なノイズとして利用するために,電子伝導のゆらぎ特性を制御することを昨年度に引き続き研究した.今年度は制御電極電圧を変えることにより,ゆらぎ量にほぼ影響を与えずにシナプス荷重値を制御できることを新たに見いだした.さらに,電圧変化に応じた静電エネルギー分布の変化を解析し,ゆらぎ量と静電エネルギー分布の関係を明らかにした. 2)ナノ構造製造方法の最適化と物理特性解明,CMOSプロセスとの結合 ナノディスクアレイ構造と結合するCMOSデバイスについては,独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の協力を得て,フィン型トランジスタ(FinFET)を用いることとして,製造プロセスを設計し,試作を開始した.FinFET作製プロセスを完了し,ナノ構造作製前の平坦化プロセスまでを行った.引き続き,作製プロセスを進める予定である.また,量子ドットの直径・間隔および埋め込み層を制御することで,ナノディスク間のバンドカップリングを制御できることが分かった.過渡応答評価に関連して,単電子デバイスの高周波特性に関する評価技術を立ち上げ,ディスク間の伝導に関してTHz領域まで信号が通ることを示した. 3)ナノ構造による計算手法の考案と情報処理モデルの最適化 開発中のデバイスで実現を目指している脳のマクロな情報処理モデルの一つである自己組織化マップ(SOM)の理論的研究を進めた.モデルの高度化に相当するSOMの高階化は理論的に見て非線形テンソル分解に相当することを明らかにし,これを応用することにより,ベクトル表現が困難な対象に関してもテンソルとして表現することで取り扱いが可能になることを示した.
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