研究課題/領域番号 |
22240024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根本 彰 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90172759)
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研究分担者 |
影浦 峡 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (00211152)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 図書館情報学教育 / 司書 / 検定試験 / 管理栄養士 / 臨床心理士 |
研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き,図書館情報学教育を進展させるための次の事業と研究を行った。 (1)図書館情報学検定試験の実施:すでに公開制で実施して3年目になるが,11月の最終日曜日に5問択一式の試験を全国5カ所の会場及び非公開の2カ所の会場,計7カ所で実施した。申込者は312人,実受験者は299人であった。年々受験者が増えており,この領域の教育評価において一定の位置づけを獲得しつつあることは確かである。また,全国図書館大会や図書館雑誌等の会議,メディアでこの試験についての議論を行う機会も得た。 (2)図書館情報学の標準的教科書の執筆と刊行:この領域がどのような範囲の知識基盤に基づくのかについて明らかにすることは上記の試験を実施するためにも重要であるが,そのために標準的教科書を執筆刊行する事業を引き続き行い,本年度は原稿の最終引渡しと編集を行い刊行に向けての最終段階となった。発行は東京大学出版会で2013年5月から7月にかけて,3巻本の教科書シリーズを出すことが決定している。これが出れば,1999年に『図書館情報学ハンドブック』第2版が発行されたとき以来のものになり,この間のデジタルネットワーク環境の大幅な進展およびそれに伴う図書館情報学の社会的位置づけの変化を明らかにするものとなる。 (3)日本の図書館情報学教育を他の専門職と比較する研究:これまで図書館情報学教育はアメリカの制度を標準的なものとしこれに近づけることが暗黙の前提とされることが多かった。しかしながら,職業の構造が大きく異なる日本の職と大学教育との関係を再考してそこに図書館情報職を位置づける必要がある。この点について司書資格を,大学院教育に位置づけられている臨床心理士及び,もともと専門学校・短大レベルで始まった栄養士資格を発展させた管理栄養士と比較し,その職の違い,教育方法や評価の違い等と比較しながら検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究は基盤研究Aの最長期間5年をかけて,図書館情報学教育の現状を明らかにし,今後の実践的な課題を克服する方法を明らかにすることを目的としている。その際に,図書館情報学教育の教育内容の確認とそれに基づく評価を新しい中心的な要素として実施することにした。前者については標準的な概説書の執筆刊行にこぎつけ,後者については図書館情報学検定試験の年1回の実施が定着しつつある。制度的な基盤がつくられることにより,図書館情報学教育に対する方向付けはできている。 当初の課題について前後するが,図書館情報学教育の現場を明らかにすることについては,他の専門職と比較することを始めたことにより進展があった。そこで得られた知見をどのように展開して実際の教育現場と関わりをもつ解決につなげることができるかが残された期間の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
中心にあった図書館情報学検定試験をどのように継続するかは大きな課題であった。この点について,研究代表者が会長を務めている日本図書館情報学会の事業の一環として進めてきたが,2012年度の後半に学会内に「学会運営に関する臨時委員会」をつくり,そのなかで図書館情報学検定試験を今後どのように位置づけるかについて議論をしてもらった。その結果,検定試験は今後も継続することが望ましいという答申となったので,この研究期間中は検定試験を推進することは可能になるものと思われる。 本年度刊行される「シリーズ図書館情報学」については,20人にのぼる著者やそれ以外の若手研究者を含めた研究会を開催して,内容的なレビューを行う研究会を開催する予定にしている。また,2010年度から実施していたアメリカの図書館情報学教科書の翻訳作業が修了し,その見直しと刊行についても見通しがついたので,これも日米の図書館情報学教育比較研究の足がかりにする予定である。 日本的専門職のあり方については昨年度末に行った学会のシンポジウムをさらに展開する研究を継続する予定である。
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