研究課題/領域番号 |
22240026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
開 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30323455)
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研究分担者 |
旦 直子 帝京科学大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40536877)
嶋田 総太郎 明治大学, 理工学部, 准教授 (70440138)
森口 佑介 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80546581)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 認知科学 / メディア接触 / 社会的認知 / 発達認知神経科学 / 模倣 |
研究概要 |
平成23年度に引き続き東大グループと帝京科学大学グループが共同でテレビを介した模倣行動について幼児を対象とした行動実験を行った。具体的には、2、3児に、女性のモデルが玩具を操作する映像をテレビで提示し、模倣行動が生じるかどうかを検討している。実験条件には、通常通りテレビで提示する条件(TV条件)、テレビに窓枠を設置する(つまり、子どもはテレビ映像を実際の出来事だと思って窓から覗く)条件(窓枠条件)、実際の女性が玩具を操作している様子を呈示する条件(リアル条件)、テレビの中の女性と玩具が動かない条件(ベースライン条件)を設定した。模倣行動の生起数を分析したところ、ベースライン条件と比較して、窓枠条件とリアル条件で模倣がより多く生起する傾向が見出されている。 脳活動計測に関しては、メディアを介した自己および他者認識について成人を対象とした行動実験・脳機能計測実験を行った。特に、画面上に提示された他者の不自然な運動を観察しているときに、ミラーシステムと呼ばれる脳領野の活動が不自然さの度合いに応じて変化することを明らかにした。また身体映像を心的回転しているときのミラーシステムの活動を計測し、その関与を明らかにした。これらの成果は学術論文誌および国内外の学会にて発表を行い高い評価を得ており、メディアを介した自己と他者の認識に関して重要な示唆を与えるものである。 また,5-6歳の幼児を対象に,メディア認識の脳内機構を近赤外分光法を用いて検討した.具体的には,テレビおよびライブの他者の行動を模倣する際の運動野を含めた前頭領域の活動を計測した.その結果,行動レベルでは,テレビおよびライブの他者の行動は同様に模倣することができた。一方,脳活動レベルでは,ライブの他者視聴時の運動野周辺の活動は,テレビの他者の観察時の活動よりも,有意に強かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の3つの研究項目を実施する計画であった。 【研究項目1】模倣行動発達の脳内機序に関する研究 【研究項目2】長期的メディアの接触経験を考慮した縦断研究 【研究項目3】映像メディアの見せ方に関する研究 これらの内、研究項目1に関しては、乳幼児(および成人)を対象とした、行動実験・脳活動計測実験ともに順調にデータが取得されている。一部の成果は既に学術論文として投稿し、採録されている。項目2に関しては、TVゲームを題材とした研究が完了しており、論文投稿準備中である。 研究項目3に関しては、25年度に集中して実施する予定である。成人を対象とした、予備実験は既に完了しており、これに基づき低年齢の子ども(と養育者)を対象とした実証的研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、比較的小規模ではあるが精緻な実験室実験を積み重ねることによって、メディアと子どもの社会的認知発達の関連性を明らかにすることを目的として行われている。今後は、研究の対象となっている子どもの人数・年齢を広げることで、本研究でえられた(えられる)研究成果をより頑堅なものにしていきたい。 具体的には、インターネット等を用いることで、不特定多数の子ども(と養育者)を対象にした実験を行うための枠組みを構築したい。 現状、タッチ式の端末は就学前の小さな子どもにも一般的に利用されており、そうした子どもたちがメディアとどのように接触しているのか、プロセスに関する詳細データをネットワークを通じて収集する仕組みを構築していきたい。
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