研究概要 |
本研究では平成23年度繰越期間中に,本研究の主たる事業である国際会議The 2nd Institute of Mathematical Statistics - Asia Pacific Rim Meetingを2012年7月1日より4日まで筑波市のつくば国際会議場にて開催した。会議は成功裡に終了し,この会議の講演発表によりアジア環太平洋地域の統計学研究の発展に寄与することができた。また以下に示すように平成23年度および繰越期間中に,研究代表者および連携研究者によって多くの研究成果を得た。 1)D加群理論の統計への応用 微分作用素を含む非可換なD加群の理論は,神戸大学の高山信毅教授のグループなどにより我が国でも理論的な研究が進展していたが,最近になってこの理論が確率分布の基準化定数や最尤推定値の数値的な評価に直接に応用できることが明らかとなってきた。このような応用は世界的にもはじめてのものであり,我々はこの方法をホロノミック勾配法と名付けた。すでに,球面上の分布であるFisher-Bingham分布の基準傘だ数にこの方法を応用した論文は刊行されている。その後,直交群上のフィシャー分布族への応用,ウィシャート分布の最大固有根の分布論への適用をおこない,ホロノミック勾配法の有用性が明らかになりつつある。 2)2005年にStudenyによって導入されたimsetの理論は確率分布のもとでの条件つき独立性の推論問題に対して,多面体論やグレブナー基底の理論が有効であることを明らかにした。本研究では,semi-elementary imsetの性質や,elemenary imsetのなす多面錐の性質をあきらかにした。 以上の研究成果は,現在国際雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
D加群理論の統計への応用は,研究開始時期には全く予想していなかった代数統計に関する新たな発展である。D加群理論の理論はこれまで統計学をはじめとする応用数学で使われることはほとんどなかったが,我々はこの理論が統計に現れる積分への応用において非常に有効であること確認しつつあり,理論および応用面での新たな展開を進めている。
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